Quantcast
Channel: いづつやの文化記号
Viewing all articles
Browse latest Browse all 4040

日本・中国の故事、歴史から生まれた傑作アート! 遣唐使

$
0
0

Img_0002_20250408233501   葛飾北斎の‘詩哥写真鏡 安倍の仲麿’(1833~34年頃 ホノルル美)

Img_20250408233501   鈴木春信の‘百人一首 安倍仲麿’(1768年頃 ボストン美)

Img_0003_20250408233501

Img_0001_20250408233501   ‘吉備大臣入唐絵巻’(12世紀後半 ボストン美)

日本史が専門の歴史学者の知識には到底叶わないが、歴史全体の流れや各時代の特徴、エポック的事件、政治・文化の発展に大きな役割を果たした人物についてはできるだけ多く知りたいと思っている。限られた時間をこの目標のためにどう使うかはいつも考えているが、ため込んだ歴史本はやはり何かのきっかけがないと真にこちらに向かってきてくれない。そのきっかけとなるのが、歴史的な事件や故事、物語がアート化された作品の鑑賞とかTV番組・映画との出会い。書籍の文字情報より美術品や映像の視覚情報のほうが情報量が多く、立体的にイメージしやすいので、理解がぐんと進む。

高校生の頃歴史の授業でインプットされた遣唐使の話が社会人になり、ふたたび好奇心に火がついたのは趣味である絵画の鑑賞に多くの時間を使っているお陰。16歳のとき遣唐使の一員として唐に留学した阿倍仲麻呂(701~760)を題材にして二人の浮世絵が描いている。

葛飾北斎(1760~1849)の‘詩哥写真鏡 安倍の仲麿’は中国に場面が設定され、日本に帰る船が難破してまた中国の地へ戻ることを余儀なくされた仲麻呂が一座の人々から視線をそらし満月を見上げる姿が描かれている。このどこか淋しげな様子をみると、百人一首に入っている望郷の歌‘天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも’がじーんとくる。鈴木春信(1725~1770)の‘百人一首 安倍仲麿’では仲麻呂は当世の美人遊女に置き換えられ、三笠の山の月を三囲稲荷の月としている。

阿倍仲麻呂はボストン美が所蔵する自慢のお宝‘吉備大臣入唐絵巻’にも霊(幽鬼)となって登場する。日本にあれば国宝間違いなしのこの絵巻は運よく2回お目にかかることができた。遣唐使として唐へ渡った奈良時代の学者、吉備真備(695~775)が、日本に帰れなくて唐で亡くなった阿倍仲麻呂の霊の助けを借り、唐人から出される難問を秘術で立ち向かうという話が漫画チックにおもしろく表現されている。上は宮殿で検討中の試験問題を盗み聞きする吉備大臣。後ろにいるのが助っ人の阿倍仲麻呂(鬼の姿を衣冠束帯の姿に変えている)。下は囲碁の名人と対局する場面。初心者の真備は相手の石をひとつ飲み込むというずるい作戦で勝利する。名人はそれに気づき下剤を飲まされるが、石は腹に止めたままにしてのりきった。


Viewing all articles
Browse latest Browse all 4040

Trending Articles