‘天鈿女命の石像’(宮崎県高千穂)
一年前、神々のふるさと 宮崎を旅行し、あらためて日本の神話と向き合った。
古事記にでてくる神々の話は小さい頃おおまかにはインプットされたから、
趣味で美術鑑賞を楽しむようになって日本画家の描く歴史画にお目のかかった
ときは‘かぐや姫’などと同じくらい作品にすっと入っていけた。
その最たるものが天の岩戸に隠れられた天照大神を誘い出すために得意の踊り
を披露した天のうづめの命を描いた絵。すぐ思い浮かぶのが出光美にあるもの。
描いたのは小杉放菴(1881~1964)でうづめの命のモデルはブギの
女王・笠置しづ子(知っている人は知っている)。両手を広げて解放感に溢れ
た踊りのパワーが天照大神の心を強く刺激したのか、岩戸をちょっと開けてし
まった。
このとき、身を潜めていた手の力の強さでは誰にも負けない筋肉マンの天手力雄命(あめのたぢからおのみこと)が一気に戸を開けた。二人の連係プレーにより天照大神(あまてらすおおみかみ)は岩屋からお出になり、天と地に日が戻った。前田青邨(1885~1977)のうづめの命は漫画チックで動きの激しさは笠置しづ子に負けていない。そして、富岡鉄斎(1836~1924)の‘天窟神楽図’はほかの神々もいれた群像画なっており、皆の必死さが直に伝わってくる。
安田靫彦(1884~1978)の‘天之八衢’(あめのやちまた)は天照大神が孫のににぎの尊(みこと)を高天原に降臨させる際、その先発隊として指名されたうづめの命が後の夫となる猿田彦神と出会う場面が描かれている。緊張する猿田彦神に対して、うづめの命の威厳のある姿が強く印象に残る。高千穂の町に飾ってあったうづめの命の石像のインパクトが半端でない。太めの笠置しづ子のイメージがすぐ重なった。