ミケランジェロの‘最後の審判’(1535~41年 システィーナ礼拝堂)
フラ・アンジェリコの‘最後の審判’(1432~35年 サン・マルコ美)
団体ツアーでイタリア観光を楽しむ場合、ローマだとまず向かうのはヴァチ
カンのサン・ピエトロ大聖堂とそのすぐ隣りにあるシスティーナ礼拝堂。
大聖堂のなかではベルリーニのすばらしい彫刻もみれるが、それよりもミケ
ランジェロ(1475~1564)の傑作‘ピエタ’のほうが強い磁力を放っ
ているので、頭の中はミケランジェロで占領されてしまう。そして、システ
ィーナ礼拝堂に移動すると今度は画家ミケランジェロの傑作が待っている。
順番としては首が疲れてくるほど天井画の‘天地創造’、‘アダムとイヴ’、‘ノア
の箱舟’からなる9つの場面をみて、そのあとちょっと休んで正面壁画に描か
れている大作‘最後の審判’に鑑賞エネルギーを注ぎこむ。ここには400名
にも及ぶ人物がひしめいている。男の体はキリストをはじめとして筋肉隆々
の生気溢れる姿をみせている。左側は天に昇る人々で、右側は地獄へと転落
する人々。キリストには髭がなく若々しい肉体で表現されているのがミケラ
ンジェロ流。
カトリックの教義では世界が終わるときにキリストが再臨して、あらゆる生
者と死者に裁きを下すのが‘最後の審判’。この絵はいっぱい描かれているはず
だが、これまでお目にかかったのは意外と少ない。ミケランジェロとフィレ
ンツェのサン・マルコ美にあるフラ・アンジェリコ(1395~1455)
の絵くらいしかすぐ思い浮かばない。
アンジェリコというと有名な‘受胎告知’が目に焼き付いているので、この‘最
後の審判’に描かれた地上界にでてくる地獄(右側)の怖い場面に戸惑う。
ええー?アンジェリコがこんな暴力極まりない地獄絵を手掛けていたとは。
最下部では悪魔の親玉が人間を食べているが、食べられた人間はすぐに排泄
され、また煮られるので地獄の苦しみから逃れることができない。罪深い者
たちは‘地獄の業火’によって煮られつづけるのである。