昨日、12/8(日)まで行われている‘山本芳翠展’をみるため岐阜県美へ行っ
てきた。岐阜県出身の洋画家、山本芳翠(1850~1906)はこの美術館
をはじめて訪問したときお目にかかった有名な‘浦島’に魅了されて以来回顧展
に遭遇することを強く願っていたが、それが漸く実現した。回顧展が行われる
のは31年ぶりのこと。でも年間の鑑賞計画に入っておらず、その情報を知っ
たのは1ヶ月くらい前のことで、危うく見逃すところだった。ずっと気になっ
ていた芳翠に導いてくれたミューズに感謝々である。
名画はみる度に感動があるといわれるが、‘浦島’でもそれがおきた。絵がこん
なに大きかった!?図版でみることが長かったからかもしれないが、本物と出
会ったときの印象で大事な要素である絵の大きさがまったく消えていた。亀
に乗っている浦島太郎は一見すると女性のイメージであるのは今回も変わらな
い。この顔つきはまわりにいる侍女のふっくらとした美形の顔と同じにみえる。
だから、男そのものの大きな足に視線を移すと違和感を覚えてしまう。今回
じっくりみてサプライズがMAXになったのが女性たちが身に着けている髪や
腕飾りの宝飾品のリアルな質感描写。これが本当に凄い。
これまで縁があった芳翠の作品は全部で両手くらいと少ないので、次々と現れ
る傑作に足をとめ息を呑んでながめていた。とくに長くみていたのが磐梯山の
突然の爆発に急いで逃れる人々の姿から現場の緊張感がみてとれる‘磐梯山破裂
之図’と上野精養軒が所蔵する‘秋の奥日光’。精養軒では店内に飾られているの
だろうか?もし楽しめるのなら時々でかけてみたい。
はじめて尽くしの回顧展だから芳翠の高い画技にびっくりさせられることがいくつもあった。そのひとつが光の表現。入館するとすぐスゴイ絵に出会った。それは‘勾当内侍月詠之図’。蝋燭の灯りに照らされた内侍が美しく輝く月をながめる姿が描かれている。まるでラ・トゥールの日本ヴァージョンをみているよう。同じようにラ・トゥールの絵を彷彿とさせるのが‘灯を持つ乙女’。蝋燭の炎は乙女の顔を照らしだしながら、左手を透かしてこちらにとどけられる。こんな描く方をするはエル・グレコ、ラ・トゥール、ルーベンスしかいないが、日本の山本芳翠もそれをやっていたとは!これには200%参った。