アレクサンドル皇帝の影武者と恋人クリステル
二人がキスするのを声をだして阻止する猿
アレクサンドル皇帝とのキス券のアナウンス
お金を払ってキス券を受け取る老若淑女
慈善キス興業に長蛇の列
今年手に入れた映画の中古DVDで一番の収穫は‘会議は踊る’(ドイツ
1931年)。ウィーンにやって来たロシアのアレクサンドル皇帝の恋人
クリステルが唄う主題歌♪♪‘ただ一度だけ’に200%嵌り、散歩のときい
つも口ずさんでいる。淀川長治さんの解説でこの映画がミュージカル映画
のお手本になったことを知り、ドイツ映画本当に凄いじゃないかと思った。
何度もみているうちに音楽だけでなく、おもしろいアイデアがいくつもある
ことに気づいた。そのひとつは映画の中に猿が登場すること。
お城に住むことになったクリステルは恋に落ちたアレクサンドル皇帝が姿を
現すのを待っていたが、やって来たのは本人の振りをした影武者。この男は
侍従長からキスを要求されたら、風邪なのでダメと言うように命令されてい
る。そして、侍従長はその状況を猿に見張りをさせている。このため、クリ
ステルはいい雰囲気になるのに影武者からは断られ、猿にも騒がれてフラス
トレーションがたまっていく。
この猿の演技をみて瞬間的に頭をよぎったのが大ヒット映画‘レイダース/失
われたアーク(聖櫃)’。インディ・ジョーンズ博士(ハリソン・フォード)
がエジプトに行き現地の友人と部屋で打ち合わせをしてるとき、毒入りの
果物を食べて死んだ猿がインディの命を救ってくれるシーンがでてくる。
スピルバーグ監督は‘会議は踊る’で使われた猿を見たにちがいない。
もうひつのサプライスはAKB48の握手券を連想させる話。会議を主催するメッテルニヒ宰相はアレクサンドルが出席できないようにいろいろ画策をする。宰相の意をくんで老貴族夫人が舞踏会の場で‘ロシア皇帝閣下はウィーン貧困救済のため皆様とのキスのチャリティをお申し出下さいました。キス1回100グルテンでございます’とアナウンスした。
イケメン皇帝だから、女性たちは大騒ぎ。お金を払ってキス券を受け取った老若淑女たちは皇帝とのキスタイムに進んでいく。でも、お相手をするのは本人ではなく影武者。それを遠くから皇帝が侍従長と一緒にみており、‘あいつも大変だなあ!’と笑っている。AKB48の握手券を思いついた者はこの映画を観たのだろうか。古い映画でこんな風景に遭遇するとは思ってもみなかった。