8月台北を久しぶりに旅行し、故宮博物館や国立歴史博物館で中国陶磁器の
傑作をたくさんみてきた。そのなかに緑と黄褐が鮮やかにでた唐三彩の駱駝
や武人が飾ってあった。日本の美術館でこれほどの唐三彩はなかなかみれな
いので息を呑んでみていた。これを真似てつくられたのが奈良三彩。真似た
のは色で形は駱駝などではなくそれまでの須恵器や土師器。
これをさらに進化させ現代に蘇らせたのが加藤卓男(1917~2005)
の‘三彩花器 爽容’。奈良三彩にくらべると硬さが消え、色調のやわらかさや
ゆったりとした装飾美にとても惹かれる。これが正倉院で一緒に飾られても
なんら違和感がない感じ。見事というほかない。
加藤卓男の陶芸を知ったのはNHKのやきもの番組。印象に強く残っているの
が復元されたペルシャ陶器の技法、ララスター彩。研究を重ね複雑な釉薬の
技法に改良を加え、独自のラスター彩を完成させた。これまでみたのはほん
の数点でオブジェ風の‘ラスター彩芥子文六方器’などお目にかかりたい作品が
いくつも残っている。強い青色と異形が目にとびこんでくる‘青釉銀華花形
花器’にも吸い込まれる。青釉もペルシャ陶器の代表的な釉。
日本民藝館で知った陶芸家の作品を心底楽しんでいるが、沖縄の陶芸家、金城次郎(1912~2004)もその一人。得意としたのは線彫りの魚文や海老文。大皿に描かれた一対の魚。力強い線彫りにより躍動感が生まれ、皿の上で魚がぴちぴち跳ねているよう。どういうわけかまだ縁がないのが‘三彩厨子甕’。厨子甕は蔵骨器。早くお目にかかりたい。