ルノワールの‘ヴェネツィア、ドカーレ宮’(1881年 クラーク美)
ターナーの‘ヴェネツィア、大運河’(1835年頃 メトロポリタン美)
‘ヴェネツィア、税関舎とサン・ジョルジョ・マジョーレ’(ワシントン国立美)
ルノワール(1841~1919)の描いた女性画に魅了され続けているが、
風景画にも印象派らしい傑作がある。それはアメリカのクラーク美が所蔵する
‘ヴェネツィア、ドカーレ宮’。美術本で知りいつか本物をこの目でと思っていた
ら、2013年三菱一号館美でクラークコレクションが初公開され対面するこ
とができた。生涯の喜びである。
40歳のときイタリア旅行したルノワールはミラノやパドヴァはさほど感銘を
うけなかったが、ヴェネツィアでは感動した。そのテンションの高まりがヴェ
ネツィアで最も人気の観光名所を輝く描写で映しとったすばらしい風景画が生
み出した。モネやほかの印象派の描いた風景画を全部ひっくるめてみても、
このヴェネツィアはベスト5に入る。
メトロポリタン美の名品展がときどき日本で開催されるが、ターナー(1775
~1851)の‘ヴェネツィア、大運河’は2度も披露され目を楽しませてくれた。アメリカのブランド美はターナーのいい絵を所蔵しておりボストンやフィラデルフィアにある作品同様、これをみていると‘水の都、ヴェネツィアに出かけてこの景色をずっと眺めていたい’という気にさせる。ワシントン国立美蔵の‘ヴェネツィア、税関舎とサン・ジョルジョ・マジョーレ’は運河に舟やゴンドラがあふれ活気のある光景になっている。これに対し、‘ヴェネツィア、嘆きの橋’は牢獄に収監された人物の嘆きが聞こえてくるような神秘的で重い詩情につつまれている。
フランスの画家ビュフェ(1928~1999)の‘大運河’もヴェネツィアとい
うとすぐ頭に浮かんでくる作品。大画面に水平線と垂直線が織りなす中世の建築
物は威厳に満ち、崇高な美を表現している。はじめてこの絵をみたとき、息を呑
んでみていた。日本人コレクターがつくった静岡県のベルナール・ビュフェ美に所蔵されていることを誇らしく思う。