‘二人のフリーダ’(1939年)
‘いばらの首飾りとハチドリの自画像’(1940年 ボストン美)
‘折れた背骨’(1944年)
気になる展覧会があれば予定をしっかりたてて美術館へ足を運び、予想以上
だったとか期待したほどでもなかったという感想を心に刻み込み、また別
の美術館に移動する。それが幸運な巡り合わせであったとはそのときは特別
意識することもない。でも、時が経ち、振り返ってみるとその展覧会をみれ
たことが運が良かったと思うことがよくある。
それは見逃した展覧会のことを思ったときに強く感じるようになる。メキシ
コの女流画家フリーダ・カーロ(1907~1954)の回顧展がたしか
渋谷のBunkamuraで開催されたことを風の便りで聞いた。美術本で彼女の
シュルレアリスム風の画風に出会い、本物に是非お目にかかりたいと思ったが、
回顧展から3年くらい経った頃だった。となると、2度目の回顧展に日本で
遭遇することはもうないかなと直感した。
そのため、これからフリーダに会う確率は大変少ないが、あきらめてはいな
い。何かの拍子でどこかの美術館が取り上げてくれるかもしれない。狙いを定めているのはポンピドゥーにある‘ザ・フレーム’とアンリ・ルソーの熱帯のジャングル画を連想させるボストン美蔵の‘いばらの首飾りとハチドリの自画像’。ボストン美には3回訪問したが、‘自画像’は一度も会ってない。普段は倉庫の中にしまってあるのだろうか?
シュールな感じと清楚なメキシコ女性のイメージがアンバランスに重なっている‘二人のフリーダ’はとても魅了される。ドキッとするのが医学書にでてくるような心臓。眉毛がつながっているのと大きな目をみているとタレントの井上咲楽が浮かんできた。‘根’はどこかマグリットを彷彿とさせる。そして、痛々しいのが‘折れた背骨’。フリーダは18歳のとき通学で乗っていたバスと路面電車が衝突し背中と右足を損傷し、その後長く後遺症に悩まされた。これを知っているとこの絵をみるのが辛くなる。