
‘イーデンハイム祭壇画 磔刑’(1512~15年 ウンターリンデン美)

‘聖パウルスを訪れる聖アントニウス(左) 聖アントニウスの誘惑(右)’
スイスで美術館めぐりが実現したとき、ドイツのミュンヘンにも足をのばす
ことを計画しているが、もうひとつ頭にあるのがフランス・アルザス地方の
コルマール。この街になんとしても行きたいのはウンターリンデン美に飾っ
てあるグリューネヴァルト(1470/75~1528)の‘イーデンハイム
祭壇画’がみたいから。
スイスのジュネーブに住んでいた頃手に入れたヨーロッパの地図でみると、
コルマールはバーゼルから北へ65kmくらいのところに位置する。だから、
バーゼル美でお目当ての作品をごそっとみたあと、タクシーを使って行けば
1時間半もあればウンターリンデン美に到着できそう。飛行機に乗ってでか
けるミュンヘンに比べれば気軽にいける。‘イーデンハイム祭壇画’はかつて
コルマールより南、20kmにあるイーデンハイムの教会の主祭壇におかれ
ていたが、フランス革命の騒乱から救われて、18世紀末にコルマールの保
護のため運ばれ、半世紀後出来たばかりのウンターリンデン美に移された。
パリの美術館を別にするとウンターリンデン美はフランスでもっとも多くの
人が訪れる美術館らしい。祭壇画の‘磔刑’の前に立ったら体がフリーズするの
はまちがいない。ワシントン国立美で遭遇した縮小版の‘小磔刑図’により目が
少し慣れているとはいえ、凄惨きわまりないイエスの死の表現は緊張感を
MAXにする。痛々しい荊冠や釘でとめられた足からは血が流れ落ちている
のはあまり長くはみてられない。
ほかでは黄色に輝く色彩が心を晴れやかにする‘キリストの復活’、‘奏楽の天使’、
シュルレアリストのエルンストの画風を彷彿とさせる‘隠修士聖パウルスを訪
れる聖アントニウス’、‘聖アントニウスの誘惑’にも視線が釘付けになる。



