‘ソロモン王とシバの女王の会見’(1452~60年 サン・フランチェスコ聖堂)
西洋絵画にだんだん嵌っていくのと並行して購入する美術本や画集の数も
増えていく。専門書には手は出さないが一般の画家の本はいくつも揃えた。
そのなかでよく読んでいるのが、‘TASCHENの画家シリーズ‘(日本語版)と
‘岩波 世界の美術’。2004年に出版された‘世界の美術’は画家のタイトル
がついたものは全部(9冊)手に入れた。この本のお陰でピエロ・デッラ・
フランチェスカ(1415~1492)の物語を知ることができた。
フランチェスカに魅了されるのは色彩があざやかなことと独特の静謐な世界。
そして、巧みな遠近法を使って奥行きのある空間をつくり物語性を高め
る技術にも感心させられる。この画家の作品は残念ながら満足のいく数に達
していない。だから、出身地の中部イタリアのサンセポルクロを訪問し本に
載っている作品をみることを夢見ている。
キリストの物語を描いた‘キリストの鞭打ち’は芝居の舞台を観るような感覚に
とらわれる。遠近法により整然と描かれた床のタイルの奥でキリストが鞭打
たれている。前列右にいる三人と後ろとの距離感のとり方がじつに上手い。
これがあるのはラファエロが生まれたウルビーノ。サンセポルクロの市立美
が所蔵している‘慈悲の聖母’は‘ミゼリコルディア祭壇画’の中心に描かれたも
の。一際大きく表された聖母はまるでガリバーのよう。左右対称の威厳のあ
る聖母の姿は忘れがたい印象を与える。
‘出産の聖母’は3人の着た衣装の色がとても目に心地いい。聖母が青で、左右の天使が緑と紫。フレスコ画の色彩の美しさを実感する。同じように人物の群像表現が色彩の力によって明確に心のなかに入ってくるのが‘ソロモン王とシバの女王との会見’。サンセポルクロ市美ではもう一点いい絵に出会える。‘キリストの復活’はキリストが十字架にかけられたあと、今まさに棺から身を起こした場面。手に勝利の旗を持ち堂々としたポーズが奇跡の瞬間を告げている。その肉体は古代彫刻をおもわせる量感にみち力強さを感じさせる。