JR東京駅の北出口の右手にある東京ステーションギャラリーと今年はすご
く相性がいい。3度目の訪問のお目当ては‘春陽会誕生100年 それぞれ
の闘い’(9/16~11/12)。閉幕2日前にすべりこんだ。チラシを手
に入れたとき、関心の中心は岸田劉生(1891~1929)と岡鹿之助
(1898~1978)だった。まだみてない作品がひとつでも出てくれ
ればもとはとれるという思いで足を運んだ。
劉生は有名な‘麗子弾絃図’や赤が目にとびこんでくる静物画‘竹籠含春’など
11点並んでいた。2019年没後90年記念の大回顧展を実施したステー
ションギャラリーだけあっていい絵を集めてくる。このなかにまだ縁がな
かった‘童女飾髪之図’に遭遇したのは大きな収穫である。‘ピークエンドの
法則’で満足度を測るなら劉生が‘ピーク’で‘エンド’は鹿之助。最後の部屋に
どんと6点でていた。チラシに使われている‘魚’はぺたっとした平板的な
静物画だが、画家独特の点描法風の表現に惹かれる。6点全部2008年
ブリジストン美(現アーティゾン美)で行われた回顧展に出品されていた
が、久しぶりにみてまた感動した。
小杉放菴(1881~1964)の母性愛にあふれる‘母子採果’と椿貞雄
(1896~1957)の‘朝子像’の前では思わず足がとまった。出かけ
る前は図録はパスの予定だったが、この2点をみて気が変わった。小杉
放菴の絵はこれまでなんどもみているが、山形県米沢市出身の椿貞雄は
まだ数点しかみた記憶がない。だから、この黄色の毛糸の服を着た女の
子に200%KOされた。My好きな子どもの絵に即登録。
三岸好太郎(1903~1934)の‘少年道化’は前みたのがいつだったか
思い出せないくらい、久々の対面。シュールな画風がインプットされてい
るのでこういうルオーを連想させるような肖像画には面食らう。お酒を飲
むと三岸をよく話題にする趣味で油絵肖像画を描いている友人はこの展覧
会をみただろうか。