イギリスの女性陶芸家、ルーシー・リー(1902~1995)の作品をは
じめてお目にかっかたのは東近美工芸館。竹橋にある東近美へ出かけたとき
は時間に余裕があれば、歩いて10分くらいで到着する工芸館へも寄り平常
展に並んでいる作品をみるというのがルーティンの流れだった。ここで
板谷波山のやきものとか着物などいろいろな工芸の分野に親しんできたが、
ときどき情報がまったくなかったのにみた瞬間に虜になるような作品に遭遇
することがある。
目の前に現れたルーシー・リーの‘線文鉢’はそんなやきものだった。説明書きを
読むと陶芸家はウィーン生まれで活動の拠点をイギリスに変えて活躍し、93
歳で亡くなったとある。イギリスの陶芸家としてインプットされている民藝派
のバーナード・リーチを第一世代とするとルーシー・リーは第二世代にあたる
人気の陶芸家のひとり。これでやきものの世界が広がったという思いを強く
もった。
‘線文鉢’は茶褐色の高台の上で乳白色に切り替わり、細い茶色の線がリズミカ
ルに走っている。このすっきり感のある軽やかな文様に大変魅了される。この
形がさらに変化したのが鮮やかな青が目とびこんでくる‘青釉鉢’。これはルー
シー・リーを代表する朝顔型の器形。口縁の直径に比べて高台が小さめにつ
くられているが、不安定な感じはしない。これは強い磁力を放っている。そし
て、さらにインパクトのある色が登場した。‘ピンク線文鉢’。陶芸の色彩に
ピンクがでてくるとは!
ルーシー・リーの作品に大変魅了されるのは形の美が楽しめること。朝顔型のほかで思わず足がとまるのが‘鎬文花器’。鎬文の上は首がぐっと細くなり視線をさらにあげるとラッパのように大きく開いた口作りがみえる。古代ギリシャにやきものでこんな形をみた記憶がある。晩年の作品‘溶岩釉花器(マーブル)’は形は古代の器というイメージが強いのに、色合いは薄土色と淡い青が絶妙に溶け合い上品な雰囲気を漂わせている。すばらしい!