日本民藝館へ通っていた頃は民藝派のやきものをみるのが大きな楽しみだ
った。富本憲吉、河井寛次郎、濱田庄司、バーナードリーチの作品に目が慣
れたいったのもここで名品の数々に出会ったから。そして、沖縄出身の金城
次郎(1912~2004)の生き々した魚文のやきものを目にしたのも
忘れられない思い出になっている。リーチの作品にもタコがでてきたりする
が、金城のやきものは海に囲まれた沖縄らしいモチーフが躍動している感じ
がする。
‘線彫魚文抱瓶’は力強い線彫りで表現された魚が器面一杯にどーんと描かれて
いる。抱瓶は沖縄特有の酒瓶の一種で、紐を通して肩からぶら下げて携帯す
る。本来は小ぶりだが、金城は大型化した抱瓶を独自につくりだした。成形
した後、器面にへらなどで線を彫り込み存在感のある魚文をかたどっていく。
体を大きく曲げた魚の闊達な表現は沖縄の豊かな海洋文化を象徴している。
魚文だけでなく海老文もぴちぴちしている。‘線彫海老文大皿’はお茶目な海老
の大きな目が愛嬌があり親しみを覚える。金城はいろんな器物に向き合っており、厨子甕(蔵骨器)では‘貼付文藍飴差厨子甕’が強く印象に残っている。このタイプのものは見たことがなかったのでその形にひきつけられた。
濱田庄司に師事した島岡達三(1919~2007)は金城次郎と同じく日本民藝館通いで存在を知った。もっとも魅了されているのは‘塩釉象嵌縄文皿’。皿の中心からぐるぐる回っている線は組紐を転がしてつけたもので、鮮やかな青の釉薬と塩でできたソーダの釉のかけ合わせによって縄目模様が引き立てられている。また、中国の越州窯の青磁壺を連想させる‘象嵌縄文三筋大丸壺’も心を鎮めてくれる。