十二代 沈壽官の‘錦手松竹鶴図花瓶’(1880~1900年 沈家伝世品収蔵庫)
十五代 沈壽官の‘薩摩蝶乗花瓶’(2010年 沈家伝世品収蔵庫)
薩摩焼をまとまった形でみる機会があったのは広島からクルマで九州大旅行
をし鹿児島にある長島美を訪問したとき。シャガールの絵同様、感激したの
が薩摩焼のコレクション。これが西洋人に人気のあったSATSUMAか、と息
を呑んでみたいた。ここから薩摩焼への興味が膨らんでいくが、幕末から
明治にかけて活躍した十二代 沈壽官(1835~1906)の作品を実際
にみたのは三の丸尚蔵館にある‘錦手菊花浮上総飾三足香炉’。
この時代たくさん制作された装飾品としての大型の香炉にまずびっくりする
が、器面に立体的な造形を貼り付けるその装飾に目が点になる。精巧な彫刻に
よる竹籠の器面に丸い小さな菊が咲き乱れ、香りに誘われてまわりを蝶が舞っ
ている。全体が茶褐色なので一見するとグロテスク感もあるが、じっくりみ
ると高い技術が駆使された名品であることを実感する。
‘錦手松竹鶴図花瓶’は2011年日本橋三越で開催された‘薩摩焼 桃山から
現代へ 歴代沈壽官展’でお目にかかった。色絵金彩の手法である錦手の名品
中の名品である。金彩で描かれた華やかな花鳥画はまるで屏風絵をみている
よう。やきものだからその輝きが永遠に失われないのがいいところ。
薩摩焼に特別の関心を向けさせるのが十五代 沈壽官(1959~)の存在が
大きい。三越で2010年につくられた作品をみて大変魅了された。これは
スゴイ才能を持った人が沈家を継いだと思った。やきものの蝶をあしらった
ユニークな‘薩摩蝶乗花瓶’にガツンとやられ、‘薩摩獅子乗香爐’と‘薩摩七宝伏
香爐’のすばらしい出来栄えにも感心させられる。