現在、東京ステーションギャラリーで開催されている‘甲斐荘楠音の全貌’
(7/1~8/27)をみてきた。甲斐荘楠音(かいのしょう ただおと
1894~1978)との出会いは福富太郎の美人画コレクションからはじ
まったが、本物をみたのはほんの数点。だから、その画風のイメージは同じ
京都市生まれの秦テルオや神戸の岡本神草らと一緒になってインプットされ
ている。浮世絵でいうと渓斎英泉の描く遊女との連想が断ち切れない。
一番の収穫は甲斐荘の絵をたくさんみれたことだが、ほかにもびっくりする
オマケがあった。それは甲斐荘が映画の風俗考証を手がけたり、衣装のデザ
インなどにも豊かな感性を発揮していたこと。
チラシにどんと使われている‘女人像’は花をもっている手の描き方が妖しげ。
これが静かなゾクゾク感なら‘幻覚(踊る女)’は農村から出てきた若い女が毒
のある匂いをふりまきながら素のままではじけている感じ。妙に惹かれる。
メトロポリタン美から里帰りした‘女’は外国人が好きそうなエキゾチックな美
人画。岡本神草の‘口紅’以上に刺激的なポーズに心がザワザワする。とても映
える着物の模様が体のラインにピッタリあっているのがすばらしい。
最後の展示室に飾ってあった大作の屏風‘虹のかけ橋’。豪華絢爛な衣裳を着た
7人の遊女が文を手にした姿で描かれている。おもしろいのは顔は丸ぽちゃ
でフィギュアの浅田真央ちゃんを連想させること。妖艶なイメージでなくか
なり可愛い遊女がずらっと揃って、観る者の気持ちをぱんぱんにさせてくれる。
懐かしい東映の人気映画‘畑本退屈男’のポスターが続々でてきた。主役を演じ
るのはあの市川右太衛門(知っている人は知っている)!。かっこいい右太
衛門が着る着物のデザインは甲斐荘が手がけたもの。ええー、そうだったの
か!今、古い日本映画の中古DVDをブックオフで熱心に集めているが、
残念なことに時代劇ものでは‘畑本退屈男’はまったくない。いつか、ゲットし
たくなった。