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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間‘! 下村観山

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Img_0002_20230505224201    ‘木の間の秋’(1907年 東近美)

Img_0003_20230505224201    ‘闍維’(1898年 横浜美)

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Img_0001_20230505224201    ‘弱法師’(重文 1915年 東博)

Img_0004_20230505224201    ‘春秋鹿図’(左隻 1902~06年)

Img_0005_20230505224201   木村武山の‘阿房劫火’(1907年 茨城県近美)

下村観山(1873~1930)の回顧展にこれまで遭遇したのは菱田春草
(1874~1911)同様、2回しかない。観山は和歌山市の出身だが、
美術コレクターの原三渓がパトロンだったため横浜と縁が深く三渓園
(2006年)と横浜美(2013年)で主要な作品が披露された。大観や
春草にくらべると知名度では下回るので、はじめの頃は作品を見る機会が少な
く、画業全体をつかむのが叶わなかった。

横浜美で大規模な回顧展を体験したあとでも、お気に入りの第一列にくる作
品はあまり変動がない。東近美の平常展でときどきお目にかかった‘木の間の
秋’がMyベストワン。春草の‘落葉’と比べると木立の密度がつんでいるため、
ちょっとビジーかなという印象は否めないが、それを除けば息を呑んでみて
しまう傑作であることは間違いない。琳派の影響は明らかで、下の草むらは
東博にある酒井抱一の絵にでてくるススキや紅葉した蔦、葛の蔓などが重なってくる。

大きな絵というのは絵画鑑賞における楽しみのひとつだが、横浜美蔵の‘闍維’
(じゃい)もその例にもれない。描かれているのは釈迦が荼毘(火葬)にふ
される場面。光を放つ金棺から白煙が立ち上がり、悲しみにくれる弟子たち
を見る者に背をむけるように配置することによって臨場感を高めている。
この絵は一生忘れられない。

東近美の‘重要文化財の秘密’に出品された‘弱法師’はとてもユニークな絵。右に盲目の俊徳丸が横向きで描かれ、屏風の大半を占める梅の木は扇子を広げたような姿で梅の花びらを楽しませてくれる。そして、左端には沈みゆく太陽。気になるのが俊徳丸の年齢。年老いた法師にしかみえない。四天王寺で自分を捨てた父親と再会するというが、よぼよぼ爺さん二人で抱き合うの?という感じ。‘春秋鹿図’は波がうねるように表現された美しい藤袴に視線が釘付けになる。

岡倉天心から五浦に呼ばれた木村武山(1876~1942)は茨城県笠間の出身。観山は3つ年下の武山と馬が合ったらしい。五浦で描いた‘阿房劫火’は秦の始皇帝の阿房宮が項羽軍に焼き払われ、炎と煙につつまれる場面が描かれている。こんな激しい火災の光景をみたことがないが、まるで大きな石油タンクが燃えるのを現場のすぐ近くでみているよう。


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