広島で9年仕事をしていたおかげで中国地方にあるこれぞという観光名所は
ほとんど訪問した。そして、質の高い美術コレクションを誇る倉敷の大原美
や島根県安来の足立美などへ出かけたのも生涯の思い出になっている。今に
なって振り返ってみると東京だけで仕事をしていたら、趣味の美術鑑賞がこ
れほど充実したものになかってなかっただろう。
日本三景のひとつになっている厳島神社は出かけるたびに感激した。朱塗りの社殿が海に浮かんでいるようにみえる光景は真に心を打つ。舟に乗って大鳥居(高さ16m)近づくにつれて次第に気分は高揚してくる。厳島(宮島)につくと鹿の出迎えをうけた後、海面をみながら長い回廊を歩いていくとタイムスリップして平安時代に迷いこんだような感じになる。そして、舞楽が演じられる舞台にすすみ、大鳥居を社殿側からながめる。こんな時間をずいぶん遡る非日常的な体験をしてみると、TVのニュースで報じられる舞楽イベントが親しみやすくなること請け合いである。
神々の国出雲の象徴、出雲大社は山陰観光のハイライト。これからまた大勢の人が訪れるにちがいない。本殿は神社建築では伊勢神宮の神明造りと並び称される大社造りの原型。茶褐色の檜皮葺の屋根が印象深く目に強く焼きつけられる。そして、よく年末の大掃除にでてくる巨大なしめ縄にも驚かされる。出雲大社に関する特別展はこれまで東博で‘出雲 聖地の至宝’(2012年)と‘出雲と大和’(2020年)が開催された。2020年のとき出品されたのが巨大本殿を支えた‘心御柱’、‘宇豆柱’。すごいものを見た。
三仏寺は鳥取県の中央にあたる倉吉市から20km南東に入った三朝町の三徳にある天台宗の古刹。‘三仏寺奥院’は一般に‘投入堂’と呼ばれている。場所は三徳山の中腹断崖にある。鎖などを使って登っていくとこれがみられると所にたどり着くが、途中いくつかの難所があるので感激もひとしお。どうやってこの蔵王堂を建てたのか、不思議な光景である。だから、役行者が法力でもって投げ入れて造られたと伝承された。そうにちがいないと確信した!