‘染付鷺文三足大皿 鍋島’(1690~1710年代 佐賀県立九州陶磁文化館)
‘染付松文三足大皿 鍋島’(重文 1690~1700年代 サントリー美)
日本で最初に磁器がつくられたのは江戸初期の1610年代頃で、まず染
付(中国の青花のこと)が肥前国有田窯で誕生した。これは初期伊万里と
呼ばれている。これまでお目にかかったもので群を抜いていいのが‘染付山
水文大皿’。強い青で屹立する岩山などの山水が力強く描かれている。手前
と遠景を描き分け立体感をつくりだしているので、躍動感と奥行きが生ま
れている。
MOAにある‘染付花卉文徳利’に魅了され続けている。器面の多くを占める
白に発色のすばらしい青の濃淡で縦にシンプルに表現された菊などの文様
が浮かび上がっている。こんな徳利で日本酒を飲むと気持ちよく酔えるだ
ろう。初期伊万里には文様の形を型紙で覆って白抜きにした吹墨の技法で
絵付された‘染付吹墨月兎図皿’(東博)のような味わい深いものもある。
染付は鍋島では高い技術に支えられて一段とグレイドアップしたやきもの
に進化していく。‘染付鷺文三足大皿’をはじめてみたとき、その構図のよさ
に思わず唸った。白抜きされた三羽の鷺が絶妙の配置でとまっており、下方
の蓮葉とうまく調和している。鍋島は将軍家への献上品や大名への贈答品
として焼かれたので、洗練された技術に支えられたこんなすばらしい大皿が
できあがった。
東博の平常展でよく遭遇した‘染付雪景山水図皿’はもう完璧に絵画感覚でみてしまう。丸い皿の画面に白く輝く雪は素地を塗り残して表現されたもの。熟練の技で手間のかかる雪を見事に描写している。鍋島は真にスゴイ!サントリー美が所蔵する‘染付松文三足大皿’は時空をとびこえた松の意匠にハッとさせられる。モダンな感性がつくるこの絵柄ならすぐポスターに使える。