日本画のど真ん中にいるのが室町時代の禅僧画家、雪舟(1420~
1506)。西洋絵画でいうとダ・ヴィンチのような存在で、描かれた山水画
をみるときはいつも特別な思いをもってながめている。現在6点が国宝に指定
されているが、2017年京博で行われた‘国宝展’にずらっと並んだ。これは
圧巻だった。京博は2002年に‘雪舟展’を実施しており、自分のところでも
‘天橋立図’と花鳥画の傑作‘四季花鳥画’(重文)を所蔵してるので雪舟には特別
気合が入るようだ。
広島で仕事をしていたとき、山口県防府市にある毛利博物館で雪舟の最高傑作‘
山水長巻’が公開されたので喜び勇んでクルマを走らせた。この展示は11月の
年中行事として定着している。長大な画巻は縦は40㎝、長さは16mもある。
それを全部みられるのだから、もう天にも昇るような気分だった。じっくりみ
ながら進んでいくと黒々とした墨の迫力がびしびし感じられ、雪舟の水墨画は
やっぱりスゴイなという思いが強くなる。上は高士と童子が石橋を右向きに歩
いている場面で目に焼きついている。
下は後半部分のハイライト、山の中の村にたくさんの人がでている。酒屋もあ
り賑わっている。ところどころ人々の着物や岩、木々の葉に赤、青、緑などが
使われ全体のなかでもっともカラフルな場面。険しい表情をみせる岩山のなか
にあってゆったり時間が流れている情景がとてもいい。
雪舟の国宝で最初にお目にかかったのが東博にある‘冬景山水図’。印象深いの
が真ん中に引かれた垂直な線。画面が裂かれるような強い線はちょっと違和
感がある。こういうのは実際にはみえないからどう感じとればいいのか戸惑う。
だいぶたってから中国の絵のなかに似たような描き方があったので、雪舟は
それをとり入れたものと今では納得している。
‘慧可断臂図’は10年くらい前?、6番目の国宝になった。慧可(えか)が自ら
左腕を切り落とし、座禅中の達磨に参禅を請う場面はいつみてもドキッとする。
これほどの決意をみせないと入門を許されなかったのか、この迫力にたじたじ
になる!