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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! 抱一 其一は浮世絵師?

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  酒井抱一の‘遊女と禿図’(1787年 出光美)

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  酒井抱一の‘美人蛍狩図’(1788年)

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  鈴木其一の‘群舞図’(19世紀 出光美)

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  鈴木其一の‘吉原大門図’(19世紀)

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  鈴木其一の‘団扇売り’(1832年 ヴィクトリア&アルバート美)

江戸琳派と呼ばれた新様式を確立した酒井抱一(1761~1849)は
姫路藩主の子として生まれたのに政治向きの話には関心が薄く、若い頃から
狂歌や浮世絵など江戸の市井文化に熱をあげた。浮世絵美人画のいいのが
出光美にある。天明7年(1787)、27歳のとき描いた‘遊女と禿図’は
肉筆画。美人画の画風としては歌川派の流祖、豊春を彷彿とさせる。これ
より以前に描いたもの、たとえば‘文読む美人画’(太田記念美)や‘松風村雨
図’(細見美)とくらべると、魅力度は格段とあがっており、一級の肉筆美人
画に仕上がっている。

この絵の翌年に描かれた‘美人蛍狩図’もなかなかいい。団扇を手にした色白
の美人が飛びかう蛍を眺めながら夕涼みをしている。夏らしい風情に体を
微妙に曲げる女の仕草がちょっと悩ましい。これも豊春風だが、抱一はこの
時期肉筆美人画を極めた感が強い。

抱一に師事した鈴木其一(1796~1858)は師匠よりさらに浮世絵に
接近している。かつてプライスコレクションが日本にやって来たとき、
200%KOされたのが‘群舞図’。こちらに顔をみせる女たちの綺麗なこと!
まるで勝川春春の美人画をみるよう。あの琳派の鈴木其一がこんな心を浮き
浮きさせる浮世絵を描いていたとは。ほぼ同じころに生まれた広重や国芳の
美人画より強く惹かれるのだから恐れ入る。

現在も大谷コレクションとなっているかわからないが、‘吉原大門図’もすばら
しい風俗画。吉原に行き交う花魁、芸者、酔客、按摩などがじつにリアルに
とらえられている。其一の人間観察力は相当高く、それが生き生きした人物
描写となって結実している。以前、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美
から里帰りした浮世絵展に其一の‘団扇売り’が含まれていた。こういう風にし
て団扇を売り歩いていたことを知った。


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