フラゴナールの‘ブランコ’(1767年 ウォレス・コレクション)
フラゴナールの‘読書する少女’(1775年 ワシントン・ナショナル・ギャラリー)
活力に満ちたバロック様式に取って代わったのがフランスで流行したロコ
コ絵画。日本でロココの絵にふれる機会はほとんどない。だから、優美な
色彩と繊細な装飾で描かれたおとぎ話に出てきそうな庭園での雅びな集い
や、明るい官能美に魅了される女性たちにお目にかかれるのは海外の美術
館。まずめざすのはルーヴル。18世紀フランス絵画が到達した美の世界
が広がっている。
ヴァトー(1684~1721)の‘シテール島の巡礼’の前に立ったときは、
これが日曜美術館をみて知った雅宴画で、ロココ様式のはじまりの絵かと
感慨深かった。シテール島は愛の女神ヴィーナスが海で生まれた後で上陸し
たという伝説上の島。ここへ詣でれば必ず良き伴侶を得られると信じられて
きた。ヴィーナス像が画面右端にみえる。理想の島へ船出してしていく恋人
たちの姿はフランス宮廷人のロマンスそのものだった。ヴァトーが亡くなる
1年前に描かれた‘ピエロ’に魅了され続けている。白い服を着た等身大の
ピエロに表情がとても清々しいのが印象的。
ブーシェ(1703~1770)は本物をみるまでは本当に好きになれるだ
ろうか思っていた。ところが、‘ディアナの水浴’に遭遇していっぺんに嵌っ
た。ルノワールは大のファンだが、ブーシェの描く女性も優しくてとても
無垢な感じがする。ポンパドール夫人がパトロンになりモデルまでつとめた
のは即納得。ロンドンのウォレス・コレクションに飾ってあった大作‘日の出’
はロココで‘最高の瞬間’だった。ラファエロやティツィアーノの絵をみるよう
だった。これは傑作、心が一気にハイになった!
ウォレス・コレクションではフラゴナール(1732~1805)の有名な
‘ブランコ’も釘づけになってみた。下から男爵がブランコに乗って開放的な楽
しみに浸る愛人を恍惚の表情で眺めている。この構図は忘れられない。
フラゴナールの絵でもう1点いい絵がある。2013年、ワシントンのナショ
ナルギャラリーでようやく対面できた‘読書する少女’。ロココの肖像画をみて
いるという気がしない。ルノワールやマネの絵と一緒に楽しんでも全然違和
感がない。この黄色の輝きに200%参った!