ポッツォの天井画‘聖イグナテイウス・デ・ロヨラも栄光’(1694年頃)
ローマへ出かけるのが2度目以上となる旅行好きの人に会う機会があると、
いつも薦めている美術スポットがある。これまで何度もふれてきたカラヴ
ァッジョの絵とベルニーニの神業的な彫刻作品がみられるボルゲーゼ美。
ここにはさらにティツィアーノやラファエロ、ドメニキーノの傑作も並ん
でいるので一度は訪問する価値はある。もう一つはパンテオンからそう遠
くないところにあるサンティニャツィオ聖堂。ここで何がみれるのか。
それはバロックの申し子と呼ばれた鬼才、アンドレア・ポッツォ
(1642~1709)が描いた驚異の3D天井画!
2010年はカラヴァッジョの大回顧展があったのでローマが当たり年に
なった。1月と5月2度でかけて、運がいいことに両方ポッツォの天井画
をみることができた。最初はこの聖堂をみつけるのに苦労した。事前に得
ていたこの絵の情報が不正確でてっきりジェズ聖堂でみれるものと意気
込んで訪問したが、これが大外れ、案内の人が教えてくれたのはポッツ
ォはポッツォなのだが、聖堂の敷地内にある付属的な場所につくられてい
るカサ・プロフェッサの回廊の小ぶりなだまし絵だった。
ここはかまぼこ型の天井をもつ廊下で天井や壁には一切凸凹がないのにある
ようにみえ、側面の壁からは天使や可愛いキューピッドが飛び出してくる。
まだポッツォのプロムナードなのに、もうマジックに面食らっている。
たまたま、そこにいた人に得意のイタリア語で(嘘です)ポッツォの有名
な天井画は一体どこにあるのか尋ねると、親切にもガイドブックの地図に
マークをつけてくれたのでサンティニャツィオ聖堂へ飛んで行った。
天井画には地上におけるイエズス会の伝道活動の勝利が描かれている。中心
にいる父なる神と十字架をもったキリストが発する慈愛と信仰の光が両手
を広げた聖イグナティウスを経て‘四大陸’の擬人像に送られている。ビック
リ仰天なのが女性で描かれた擬人像や馬や駱駝、ジャガー、天使、擬人像
が戦う異教の男たちが宙に浮いているようにみえること。こんな体験はは
じめて。ありゃー、どうしてこんな風にみえるの?!トリックのスゴさは
人物描写だけでなく実際の聖堂よりはるかに大きなスケールの世界が上に
広がっているように錯覚する。300年前、ポッツォがこんな迫力満点の
だまし絵を描いていたとは、バロックで‘最高の瞬間’だった!