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Channel: いづつやの文化記号
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美術で‘最高の瞬間’! 目に突き刺さる女性画

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Img_0003_20220616223901   クリヴェッリの‘マグダラのマリア’(1487年 アムステルダム国立美)

Img_20220616224001  コレッジョの‘幼いキリストを礼拝する聖母’(16世紀 ウフィツイ美)

Img_0001_20220616224001  パルミジャニーノの‘長い首の聖母’(1534年 ウフィツィ美)

Img_0002_20220616224001  ブロンズィーノの‘ルクレツイア・パンチャテイキの肖像’(1540年 ウフィツイ美)

Img_0004_20220616224001   

レーニの‘ベアトリーチェ・チェンチの肖像’(17世紀初頭 バルベリーニ宮殿)

ルネサンス絵画でラファエロやボッティチェッリ、フラ・アンジェリコのよ
うな優しく心が洗われるような聖母やヴィーナスに心地よさを感じると、
ヴェネツィア生まれのクリヴェッリ(1430年代~1494年)の‘マグ
ダラのマリア’の前に立つとはじめはすごく違和感がある。アムステルダ
ム国立美でこの絵をみたのがクリヴェッリとのつきあいのはじまり。つんと
すました表情は冷たい感じがありありで、異様な曲がり方をみせる手の指も
魔女を連想させる。その後、ロンドンのナショナルギャラリーやミラノの
ブレラ美で聖母子像をみていると、その刺激的な目力にもだんだん慣れもっ
とみたいと思うようになった。絵画は不思議な力をもっている。

フィレンツェにあるウフィツィ美にはバランスのとれた正統派ルネサンスの
理想的な美を崩して新たな美の地平をひらこうとするマニエリスムの画家た
ちの作品がたくさん飾ってある。コレッジョ(1481~1534)は半分
はマニエリスムの香りのする画家。眼の描き方にとても甘いところがあり
魅力に満ちている。とくに気に入っているのが神秘的な宗教画をすごく感じ
させる‘幼いキリストを礼拝する聖母’。コレッジョに師事したパルミジャニーノ
(1504~1540)の‘長い首の聖母’はぱっと見るとすっと入っていける
のだが、じっくり描かれた人物をみていくとどこか違っているなと気づく。
聖母の手は首同様に異様に長く、左の密になっている子どもたち(6人)の目
や表情がとても真剣で必死に幼子キリストやマリアをみている様子がなかな
かいい。

マニエリスムで一生懸命にみるのはパルミジャニーノとブロンズィーノ
(1503~1572)だけ。ウフィツィはブロンズィーノの宝庫で肖像画
が何点もある。そのなかで群を抜いて輝いているのが‘ルクレツィア・パン
チャティキの肖像’。視線を合わせるときりっとした美形にたじたじになる。
ロンドンのナショナルギャラリーにある寓意画とこの絵画がブロンズィーノ
流の最強マニエリスム絵画かもしれない。

フェルメールの‘真珠の耳飾りの少女’に霊感を与えた作品をいわれているレーニ(1575~1642)の‘ベアトリーチェ・チェンチの肖像’。ローマの市街にあるバルベリーニ宮殿を訪問したときこの絵はお目当ての絵のひとつだった。浮世絵の見返り美人のようにこちらをふりかえるベアトリーチェの美しい姿をみると、父親殺しで断頭台の露と消えた女性にはとても思えない。この悲劇をレーニは死の前のチェンチを描き、カラヴァッジョは1599年9月11日、サンタンジェロ橋の広場で行われた処刑をみて‘ユディット’を描いた。


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