‘聖女テレサの法悦’(1645~52年 サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア聖堂)
‘福女ルドヴィカ・アルベルトーニ’(1671~74年 サン・フランチェスコ・ア・リーパ聖堂)
彫刻が好きな人にとってローマはご機嫌な街かもしれない。サン・ピエトロ
大聖堂に足を運ぶとミケランジェロの傑作‘ピエタ’がみれるし、ローマ国立
博やカピトリーニ美では古代ローマの有名な彫刻がたくさん飾られている。
そして、ボルゲーゼ美、聖堂をまわると盛期バロックの天才、ベルニーニ
(1598~1680)の‘芸術の奇跡’と称された彫像の数々が存分に楽し
める。
2006年、ローマで美術館や聖堂をいろいろまわったときは‘最高の瞬間’
が繰り返しおこるという奇跡的な鑑賞体験だった。その主役は絵画ではカラ
ヴァッジョ、彫刻ではベルニーニ。日本にいるとき日時の予約を入れていた
ボルゲーゼ美ではこの二人の作品に大変魅了された。とくにそれまでサン・
ピエトロ大聖堂でしか縁がなかったベルニーニの‘プロセルピナの略奪’と‘ア
ポロンとダフネ’に強い衝撃を受けた。
冥界の王プルートの指がプロセルピナの太腿に軟式のテニスボールがへこむ
ように食い込んでいる。硬い大理石でこんな柔らかさが表現できるのか、ま
さに神業的な超絶技巧。目が点になった。そして、ダフネの髪が枝葉に変容
していくところもスゴイ。身体を大きくよじる造形によって生まれる迫真の
動きはバロック彫刻の真髄をみる思いである。この2点のインパクトがあま
りに大きかったので、帰国してから美術好きに会うたびにボルゲーゼのベル
ニーニを推奨していた。
サンタ・マリア・デッラ・ヴィットーリア聖堂でみた‘聖女テレサの法悦’、
そしてタクシーをとばして使って出かけたサン・フランチェスコ・ア・リー
パ聖堂でお目にかかった‘福女ルドヴィカ・アルベルトー二’は心がザワザワし
てくる官能的な彫像。絵画でいうとクリムトの‘ダナエ’をみているときと同じ
痺れをじわじわ感じてくる。