先月、Eテレで放送された‘100分de名著 金子みすゞ詩集’にどっぷり嵌っ
てしまった。この番組は以前から関心のある本が登場するときは必ずみてい
る。たとえば、近いところでは作家の高樹のぶ子が話してくれた‘伊勢物語’
(2020年11月)、‘カント 純粋理性批判’(2020年6月)。
今回TVガイドをみて楽しみにしていたのが童謡詩人金子みすゞだったが、
4回の番組を通じて今、金子みすゞの詩集が多くの人に読まれていることを
知った。毎回熱心にみていたのは講師の松本侑子さんの話がとても上手だか
ら。お書きになった小説‘みすゞと雅輔’を近々購入しようと思っている。
2002年、日本橋三越で‘中島潔が描く金子みすゞ’展にめぐり合い、金子
みすゞ(1903~1930)の詩が心のなかに入った。全部で38。この
なかに番組でとりあげられたものが5つあった。詩のイメージと中島潔
(1943~今年79歳)の描く子どもの絵がぴったり合っているのが
代表作の‘大漁(たいれふ)’。後半の‘濱は祭りのようだけど 海のなかでは
何萬の鰮(いわし)のとむらひするだろう。’がいつもぐさっと胸に突き刺さ
る。鰮の気持ちになってみるところがスゴイ。
1回目のときはっとさせられる詩があった。‘積もった雪’、すごく分析的で
雪を3つの層にわけて、各層にやさしい言葉をかける。
‘上の雪 さむかろな。つめたい月がさしていて。
下の雪 重かろな。何百人ものせていて。
中の雪 さみしかろな。空も地面(じべた)もみえないで。’
とくに‘センス オブ ワンダー’なのが最後の中の雪。たしかに真ん中にいると
空も地面もみえないから孤独。金子みすゞは瞬間的にシュルレアリスト!か
と思った。こんな発想はとても浮かんでこない。
‘蜂と神さま’は物理学者の視点がうかがえる作品。小さな蜂の世界からどん
どん大きくなり宇宙の彼方の極大の世界にまで視野は広がる。そして、神さ
まは小ちやな蜂のなかに入っていく。こちらは極小の世界で神さまは原子、
素粒子の超ミクロの世界に存在する。ビッグバン宇宙論である。