今年は3月にDVDの再生プレーヤーを買ったのがきっかけとなり、昔見た
お気に入り映画をブックオフでせっせと買い込んでいる。名作映画というの
は映画を見終わったあと感動をさらに膨らませるためのルーティンが続く。
SNSで映画の関連情報をいろいろさがし映画大好きさんの感想コメントや
映画評論家レベルの知識をもち見どころをしっかり教えてくれる上級クラス
のファンの話も読ませてもらう。これくらい情報を集めると、映画をみてい
るときの疑問や見落としていたところがうまくカバーでき作品の楽しみ方が
一段上がったような気になる。
そして、映画の原作となった小説があれば本屋にでかけ手に入れておくのも
お決まりの行動。たとえば、カズオ・イシグロの‘日の名残り’(ハヤカワ文庫
、グレアム・グリーンの‘第三の男’(ハヤカワ文庫)、ジョン・スタインベック
の‘エデンの東’(1~4 ハヤカワ文庫)、スティーヴン・キングの‘グリーン
・マイル’(小学館文庫)。
ヘミングウエイの小説を映画化したものでは、‘誰がために鐘は鳴る’、‘老人と
海’がMyライブラリーに入っている。ずっと探していた‘老人と海’が運よくみ
つかりいいDVDをゲットしたと心が満たされていたら、10月NHKのE
テレの番組‘100分de名著’でヘミングウエイ スペシャルが放送された。
いい流れがきたのでテキストも買って毎回みた。
2回目のとき久しぶりに見た映画では気がつかなかったことを講師の都甲幸治
氏(早大教授)から教えてもらった。大きなカジキをしとめた老人は心地よい
疲れを感じながら港へ帰還するが、途中サメの集団に獲物をしつこく狙われて
大苦戦する。弱気になった老人は自分にこういい聞かせる。‘あれこれ考えるな
よ、じいさん’、‘このまま進んで、いざとなったら受けて立ちゃいいんだ’。
また、しばらくすると‘考えすぎだぞ、じいさん’と声をだす。
都甲さんはすごくいいことをおっしゃる。‘何も考えるなという、考えるという
ことは言葉を使って過去にあったこととか、未来のことを考えるということ。
そうすると現在にいられない。言葉を使って状況をつかんでしまうことで感覚
が鈍くなる。そうなるとサメに負ける。考えるなとは今の現実に意識を向けろ
ということ’。
この話を聞いてはっとした。スポーツでは考えないことがやはり一番大事なの
だと。いまに集中してゾーンに入る。そうすると大きな力が生まれる。引退し
た豪栄道が全勝優勝したときは完璧にゾーン状態だった。一方、大関時代いつ
もいいところで勝てなかった稀勢の里(元二所ノ関親方)はあれこれ考えすぎ
て優勝にとどかなかった。大リーガーのダルビッシュも同じでいろんな球は投
げられるが大一番でいい結果が出せない。‘もっている’野茂やイチローや大谷が
緊張しないのは余計なことを考えていないから。自分の力を信じて投げたり打
つからいい成績が残せる。
都甲さんはさらにこう続ける。‘体の感覚、身体性を現代の社会だと忘れがち。
スマホでだいたいできるんじゃないか、と思ってしまう。だから、体を見直す
ということは大事’。ヘミングウエイの‘老人と海’はこんなにいい話がモチーフのひとつになっていた。