‘ジャック・イン・ザ・プルピットⅢ’(1930年 ワシントンナショナルギャラリー)
‘ピンクの上の二つのカラ―・リリ―’(1928年 フィラデルフィア美)
アメリカのブランド美術館を本格的に回るようになったのは2008年から。
このあと、2013年、2015年にもお目当ての美術館にせっせと足を運
んだ。訪問した都市はシカゴ、NY,ボストン、ワシントン、フィラデルフ
ィア。こうしてアメリカの美術館に展示してある名画の数々に魅了されてい
くなかで、ヨーロッパの美術館では味わえない鑑賞体験があることがわかっ
てきた。
それはどこへ行ってもよく遭遇するコール、チャーチ、ビーアスタットらの
ハドソンリバー派の大きな風景画と印象派のカサット、現代アートのジョー
ジア・オキーフ(1887~1986)の絵。この嬉しい体験のお陰で横浜
美であったカサット展(2016年)がすごく楽しめた。だから、ハドソン
リバー派とオキーフについても回顧展が実現することを強く願っている。
でも、まだミューズは微笑んでくれない。
女流画家オキーフに大変魅了されている。手元にあるTASCHEN本に載ってい
る作品の2割くらいしか眼の中に入ってないが、ワシントンナショナルギャ
ラリーやフィラデルフィア美が所蔵する大きな花の絵に出会ったことは生涯
の想い出になっている。濃い緑が目に飛び込んでくる‘ジャック・イン・ザ・
プルピット’はナショナルギャラリーに‘Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅵ’があるが、運がいい
ことにⅡを除いて3点みることができた。‘ピンクの上の二つのカラー・リリ
―’は日本で開催されたフィラデルフィア美展に出品された。
オキーフが描く花は普通の静物画とはちがって馬鹿デカい。‘赤いケシ’も
‘ケシ’もその大きな存在感に圧倒される。彼女はこんなことを言っている。
‘誰も本気で花をみてません。ものをみるには時間がかかるのです。私は思い
ました。みたままを描いてやろう。私にとって花が何であるかを。ただし、
うんと大きく、そうすれば皆びっくりして時間をかけてみるだろう。私が花
の何をみているかを目の前につきつけてやろう’。
ワシントンのフィリップスコレクションにある‘レッドヒル’は期待に胸をふく
らましていた作品。オキーフは花の絵だけでなく抽象画の要素を秘めたドラ
マチックな風景画を生み出した。広大な岩山、それを赤く染める夕陽、大胆
に単純化された赤や黄色の色面の重ね合わせによってアメリカの自然の雄大
さと厳粛性を表現している。