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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! ターナー(3)

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    ‘バターミア湖’(1798年 テート美)

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  ‘ヴェネツィア、嘆きの橋’(1840年 テート美)

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 ‘サンタ・マリア・デッラ・サルート聖堂から望む’(1835年 メトロポリタン美)

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 ‘ケルン、郵便船の到着 夕刻’(1826年 フリックコレクション)

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 ‘チャイルド・ハロルド巡礼ーイタリア’(1832年 テート美)

ターナーが23歳のときに描いた‘バターミア湖、クロマックウォーターの一
部、カンバーランド、にわか雨’はイングランドの北部にある湖が舞台。ター
ナーは旅好きで国内をいろいろまわっている。虹が印象的なこの絵は一見す
るとドイツロマン派のフリードリヒを連想させる。コンスタブルの虹がダブ
ルであったり、大聖堂を囲ったりしてすごく見栄えのするのに対し、ターナ
ーの虹は自然の力強さや崇高さが一緒に喚起されるため背筋がしゃんとする。

絵画に描かれる場所が観光旅行でみた名所だと、絵の食いつきはとてもいい。
‘ヴァネツィア、嘆きの橋’は誰もがガイドさんの解説を熱心に聴く有名な橋。
左のドゥカレー宮殿から連れ出された囚人は悲観にくれながら‘嘆きの橋’を
渡り、右の館の過酷な牢獄に収監される。メトロポリタンにある‘サンタ・
マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む’の場所もこの聖堂(手前右)
を訪問したからだいだいイメージできる。この大運河(カナル・グランデ)
をまっすぐ進むと‘嘆きの橋’のところに着く。ドゥカレー宮殿の後ろに鐘楼
がみえる。壮麗な光と明るい色彩で表現された運河の光景がじつに心地いい。
今、ヴェネツィア観光はどうなっているのだろうか、もう2回くらい行きた
いのだが。

NYにあるフリックコレクションはフェルメール好きにとっては是非とも足
を運びたい美術館だろうが、ほかにもいい絵画たくさんある。コンスタブル
もターナーもいい絵をしっかり蒐集している。ターナーは5点もある。
そのうち2点はヨーロッパ北部の港が描かれたもの。‘ディエップ港’と‘ケル
ン、郵便船の到着 夕刻’はどちらも大変大きな絵。‘ケルン’は太陽はみえな
いが空に光がひろがり、多くの船が行き来するライン川の活気ある光景を浮
き彫りにしている。

バイロンの詩にもとづいて描かれた‘チャイルド・ハロルドの巡礼ーイタリア’
はロココ絵画のヴァトーが描いた雅宴画の英国版といったところ。目を惹く
のは絵全体にあふれる黄金色の光と強い存在感をみせて立っているキノコの
形をした松。その大きな傘の下で人々が踊ったり歓談している。バイロンの
詩とターナーがイタリアでみた美しい光景がブレンドされてこんな傑作が誕
生した。


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