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Channel: いづつやの文化記号
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Anytime アート・パラダイス! バルテュス(3)

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    ‘崖’(1938年)

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  ‘樹のある大きな風景’(1960年 ポンピドー)

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    ‘窓’(1951年 トロア近美)

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    ‘窓辺の少女’(1957年 メトロポリタン美)

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    ‘部屋’(1952~54年)

バルテュスのイメージは8割方少女をモデルに使った作品でできあがってい
るが、ほかのモチーフを描いてないわけではなく風景画も静物画もある。
海外の美術館で遭遇しなかった風景画をまとまった形でみたのは2014年
の回顧展(東京都美)。このなかで思わず足がとまったのが‘崖’。ぱっとみる
とクールベが故郷オルナンの風景を描いたものと似ている。樹木がなく存在
感のある白い岩の塊を強く印象づけるため日差しがあたる時刻の姿がしっか
り描かれている。

‘樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)’は第二次世界大戦後、パリ
の喧騒から離れブルゴーニュ地方のシャシーの城館に移り住んだ時期
(1953~1961)に描かれたもの。画面は光に満ちている向こう側の
野原と手前中庭の暗い影の部分で二分されている。とくに目が刺激されるの
は庭に差し込む三角形の金色の光。その下をよくみると後ろ姿の農夫が歩い
ている。幾何学的なイメージの農家を近くの位置に大きく描きそこから先は
並行するように小さく配置していき空間の広がりをみせるところがなかなか
いい。

マティスの‘コリウールのフランス窓’がすぐ思い浮かぶ‘窓’はパリ6区にかま
えたアトリエで描かれた。少女も猫もいないので拍子抜けするが、静かなが
らんとした室内の雰囲気はマティスやフェルメールとのコラボを連想する。
こういう室内画が描けるのはやはり一流の証。日曜画家の腕ではとても描け
ない。‘窓辺の少女’はシャシーの城館の一室で窓から外を眺める後ろ姿の
少女が描かれている。2015年METを再訪したとき運よくお目にかかれ
た。普通は女性を後ろから描いたものはパスなのだが、この少女はロート
レックの女性同様、例外扱いとしている。

‘部屋’はとても不気味な絵。窓のカーテンを開け光を部屋に呼び込んでいる
少女?の顔の怖いこと!いや少女ではなくメイドの女性?猫がこの女をじっ
とみているのがおもしろい。窓から入ってきた強い光が椅子に座ってのけぞ
る裸婦の体を輝かせている。右足を思いっきりのばした体は対角線をつくり
カーテンの斜めのラインと呼応し眠ったまま動きを生み出している。いつか
本物と対面したいが、その可能性はどうしようもなく小さい。


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