日本でムンクの回顧展をみる機会は2回あった。最初は2007年
(西洋美)で2度目はだいぶ間隔が開いて3年前の2018年。東京都
美に‘叫び’がやって来た。いずれも展示されたのはオスロ市ムンク美が
所蔵する作品。お陰でオスロに行かなくてムンク美の主要作品は大半お
目にかかれたことになる。
西洋美のムンク展がありがたかったのは‘叫び’と同じ構図で描かれた
‘絶望’と‘不安’。‘叫び’とはまだ縁がなかったが、ここに登場するのは幽霊
顏の男ではない憂鬱そうな男や正面向きの少女や帽子を被った男性たち
だが、血の色を連想させる背景の空やフィヨルドがみれたのでなんだか
‘叫び’を半分は味わった気分だった。
‘絶望’に描かれた男はオスロ国立美にある‘メランコリー’でもモデルをつ
とめている感じ。この人物表現がインパクトがあるのは右手前で顔と肩
だけを大きくみせているから。そして、画面の上部をみると桟橋に3人
が小さく描かれている。向こうは何の悲しみも不安もなさそうなのに、
手間の男は手を頬にあて落ち込んでいる。こういう風に対比されるとこ
の男に寄り添いたくなる。
‘マドンナ’は‘叫び’とともにムンクのイメージをつくってる作品。頭の上に
ある光輪の赤の磁力に思わず引きこまれた。女性は妊娠している。顔を
傾け恍惚とした表情で黒髪を振り乱す姿はあまり長くはみれない。
この女性の髪にさらにドキッとするのが‘灰’。これは勝者の女と敗者の
ムンクという思いを表している。ムンクがつきあった人妻ミリーはほか
の男性とも関係をもっていた。二人は長い髪で結ばれていても男は恋に
苦しむ。