東京都のコロナ感染者の数が爆発的に拡大しているので、気になる展覧会が
あっても怖くて美術館へは出かけられない。だから、当初アバウトに決めて
いた出動のタイミングはできるだけのばし会期の最後くらいまで様子をみる
ことにしている。新型コロナの感染が世界的に広がったのは昨年のはじめく
らいから。このため海外旅行も国内の移動もダメ、不自由極まりない生活が
1年半くらいになろうとしている。世の中、何が起きても不思議ではないが、
パンデミックがこのタイミングで起きるとは。そして、新たな変異株の出現
などがあり収束の予想すら立たない。これを考えると2018年北欧旅行を
して、ノルウェーのオスロ国立美でムンク(1863~1944)の‘叫び’を
みたのは本当についていたなと思う。もし、コロナパンデミックが1年早く
おきていたらすべてがパーになっていた。
ムンクの‘叫び’は美術史に残る一大傑作。美術の教科書に載っているから、
普通に勉強している人なら知っている。でも、本物をみるのはそう簡単では
ない。それはこの絵がある国に関係している。パリやロンドン、NYだと人気
の観光地だから団体観光ツアーでも個人旅行でも貯金をしてお金をため休みが
とれれば楽しいスケジュールがつくれる。これに対して、北欧旅行は関心の
ある国に入っていたとしても、優先順位はどうしても件の都市などと比べると
下がってしまう。わが家の世界旅行のグランドプログラムでもデンマーク、
ノルウェー、スウェーデン巡りがなかなか実現しなかった。
ムンクが29歳のとき描いた‘叫び’が最初のもので、オスロ国立美にある。
感激の対面だった。そして、その2年後、31歳のときの‘叫び’は2012年
5月、96億円(当時)で落札されたもの。このパステル画ヴァージョンは
2013年NYのMoMAを再訪問した時に運よく展示してあった。こういうこ
とがあるから美術館巡りはやめられない。この絵は一体誰が所有しているの
だろうか? そして、1910年にまた描かれたのがオスロ市のムンク美が
所蔵しているもの。これは2018年秋に東京都美で開催されたムンク展に
出品された。このヴァージョンは10何年前に出光美で展示された?記憶が
あるが、このころ東京にはいなかったのでみれなかった。だから、2018
年に未見の‘叫び’2点が一気にみれたことが嬉しくてたまらない。過度の不安
や恐怖のため幽霊のような顔になった男を目に焼きつけた。