東博で現在開催されている‘人間国宝展(1/15~2/23)’を存分に楽しんだ。昨年60回をむかえた日本伝統工芸展に出かけたことは一度もないから、陶芸以外の工芸についての知識はとても少ない。だから、伝統の技を受け継ぎ新たな美を生み出す現代の名工たちの作品がずらっと揃った展覧会は工芸のすご技と豊かな芸術性を知る絶好の機会、一点々じっくりみた。
陶芸、染織、漆芸、金工、人形などいろんな作品があるので、その距離感を少しでも縮めるためにこれまでの鑑賞体験を総動員した。工芸とのとっかかりが少しはできているのは以前東近美の工芸館へ何度も通ったから。また、2006年日本橋の高島屋であった‘人間国宝展’をみたことも多様な作品に目を向けるきったけになった。
だから、今回の人間国宝展は2ランド目。これは前回出でていたな、というのが片手くらいあった。そして、記憶にとどまっている作家の作品をくらべてみると総じて前より出来栄えのいいものが多い。やはり東博で行われると作品のレベルがワンランク上がるという感じ。
増田三男(1909~2009)の‘金彩銀壺’は躍動感のある鹿に思わず見惚れた。兎か鹿かで隣の方と意見が食い違った。これは東博の所蔵だが、平常の展示でみたことがない。生野祥雲斎(1904~1974)の‘竹華器’も丸い造形美が心を打つ。竹細工いうのは温かみを感じるから手に触ってみたくなる。その斬新な造形は日本的な柔らかさとモダンな感覚が見事にとけあい美しさを際立せている。
平田郷陽(1903~1981)の人形を8年前みたときその溢れるやさしさに感激した。今回でている‘抱擁’も心が和むすばらしい人形。つい最近散歩の途中に生まれて2ヶ月の赤ちゃんに会った。この人形をみてそのときのお母さんと赤ちゃんが向き合う姿を思い出した。
東近美では森口華弘(1909~2008)の友禅の着物を夢中になってみる。‘羽衣’は爽やかで軽みを感じさせる意匠が強く印象に残る。風力発電の大きな羽がリズミカルにまわっている光景を連想した。また、山田貢の‘紬地友禅着物 夕凪’にも足がとまった。