東京にある美術館でもっとも馴染みのあるのは上野の東博と竹橋の東近美。
関心の的は回顧展を中心にした特別展だが、ここでは平常展をみるのも大
きな楽しみ。どちらも必見リストを手にして全部みとどけるまで何度も通
った。東近美は‘近代日本画の殿堂’、美術本に載っている名画が続々登場
する。
7,8年くらい前、ある企画展をみたあと日本画の展示室にいったとき嬉
しい絵が飾ってあった。狩野芳崖(1828~1888)の‘仁王捉鬼図’、
これは山形の本間コレクションであることは以前から知っていたのでびっ
くりした。いい絵を東近美は手に入れた。フェノロサから色彩のアドバイ
スを受けて制作したド派手な仁王が鬼の首をぎゅっとつかんでいる。戯画
チックな鬼の姿がじつにおもしろい。
横山大観(1868~1958)の‘生々流転’、菱田春草(1874~19
11)の‘賢首菩薩’、下村観山(1873~1930)の‘木の間の秋’も美術
館のお宝のひとつ。40mも続く絵巻‘生々流転’は5年に一回くらい?公開
される。コロナ禍でなかなか通常の展覧会モードに戻らないのはもどかしい
が、来年あたりの展示が実現することを期待したい。
川合玉堂(1873~1957)の‘行く春’は桜の季節になると定番の作品
として目を楽しませてくれるが、今年はどうだろうか。小雪のように飛び散
る桜のなかを水車舟が流れていく光景が真に美しい!これほど動感描写が
見事な桜はみたことがない。