小学校へ通いはじめてから高校を卒業をするまでの学校生活において美術を
学ぶのは普通は教科書を通じてのもの。高橋由一(1828~1894)の
‘鮭’は日本史の教科書で知ったような気がする。よく覚えてないが高校のと
き美術や音楽の授業が単独の科目としてあったかどうか。音楽については、
女の先生に有名なチャイコフスキーのピアノ協奏曲を弾いてもらったが、
美術の先生は思い出せない。
教科書に載った洋画で一番目に焼きついているのは‘鮭’と青木繁(1882
~1911)の‘海の幸’と岸田劉生の‘麗子像’。だから、同じく重文に措定さ
れ芸大が所蔵している由一の‘花魁’の存在が気になるりだしたのは絵画鑑賞が
趣味になってからのこと。原田直次郎(1863~1899)は縁の薄い
洋画家であり、2016年埼玉県近美で開催された回顧展までは代表作の
ひとつ‘靴屋の親爺’などを単発的にみるだけだった。しかし、この回顧展
をきっかけに画家をみる目が変わった。靴屋の目力に圧倒される!
青木の自画像は本人とのギャップがあり過ぎるので戸惑う。ぱっと見ると
コメディアンの高田純次を連想するが、目が大きいところは女性を意識的に
西洋人のようにみせるため目を大きくしたことが関係しているのかもしれ
ない。
直次郎の逞しい親爺と同様にびっくりするほどリアリテイのある人物画とな
っているのが山本芳翠(1850~1906)の‘西洋婦人像’。芳翠にしろ
黒田清輝にしろ藤島武二にしろ、ヨーロッパの人は絵の説明書きを伏せて
いたらその女性画を日本人画家が描いたとは思わないだろう。藤田嗣治
(1886~1968)の‘婦人像’は第一世代洋画家の黒田たちの影響が色濃
く出ており、斜め後ろからの姿がなかなか魅力的。