10年前、パリのルーヴル美からそう遠くないところにあるパリ装飾芸術美
術館を訪問した。ルネ・ラリック(1860~1945)がデザインした美
しいブローチやネックレスなどのジュエリーをみるためである。最初は宝飾
品のデザイナーだったラリックはその後ガラス作家へと転身し、人生の後半
はアール・デコ様式のガラス作品にも力を注いだ。
東京都庭園美はよく出かけた美術館で今でも企画展は定点チェックしている。
これまで印象深い展覧会としてアンソールとキスリングの回顧展がある。
ほかにも工芸関連があり相性がいい。こうした質の高い特別展への期待がある
のだが、ここでは正面玄関のガラス扉にすごいものがある。ルネ・ラリック
がつくった‘女性像’、この旧朝香宮邸宅(1933年)はラリックのアール・
デコ様式でつられた建物の一つなのである。
胸をいっぱいにそらした女性像はギリシャ神話の勝利の女神ニケ、薄布で覆
われ浮かびだすように上半身が大きく前に張り出している。こんな目を惹
くラリックの作品が日本にあるというのが驚き。ここへ来るたびにスゴイな
思う。
入館すると最初の展示室の天井をみあげると2番目のサプライズにでくわす。
‘ブカレスト’と名づけられたシャンデリア。一見するとチューリップを連想する。
ここは大客室だったところで、このきらびやかなシャンデリアの下で招待され
た客たちはおおいに胸が高まったにちがいない。こんなすばらしい邸宅美術
館とはこれからも長くつきあっていきたい。