箱根仙石原にある箱根ラリック美を訪問したのは開館した2005年かその
翌年。開館から15年経つのですっかり箱根の名所になっているにちがい
ない。ガレ同様日本にも愛好家がたくさんいるルネ・ラリック(1860
~1945)の宝飾品やガラス作品が楽しむためにこれまで足を運んだのは
東京都庭園美術館、諏訪湖の北澤美、そして箱根のポーラとラリック美。
ほかにも滋賀県長浜市の成田美や飛騨高山美にラリックコレクションがある
らしいのだが、まだ縁がない。
女性たちがラリックに熱い視線を寄せるのは初期の頃手がけた胸元飾り、
ネックレス、ブローチなどの宝飾品。彼女たちの興奮ぶりと歩調をあわせて
舞い上がるというところまでいかないが、宝石にくわえ象牙、七宝、色ガラ
スなどをふんだんに使い色彩豊かに仕上げた胸元飾りなどをみているとかな
り高揚してくる。ブローチの‘シルフィード(風の精)’は小品だが装飾的な
意匠が心に響く。
ここは1500点くらい所蔵しているが、宝飾品のほかにもガラス作家
ラリックの目を見張らせる作品が続々登場してくる。‘つむじ風’という名の
ついた花器の強い存在感に惹きつけられるが、これ以上にはっとさせられる
のが横に並んでいるどぐろをまいた蛇の花瓶。昔から蛇が苦手なのでこれは
パス。
オパルセント・ガラス製の置物、‘彫像・タイス’は暑い夏にはもってこいの
作品。これをみて以来、夏がやってくるとひんやりした風を運んでくれる
このタイスを眺めている。そして、透明感のあるドレ―パリー(衣文)は
ギリシャ彫刻をみているようで気持ちがいい。
昨年、友人がトヨタ博物館へ出かけラリックのカーマスコットをみたと熱く
語っていた。全作品を揃えているとのこと。流石、クルマの会社である。
ここに飾られているのは口を大きくあけ髪をピンと立てている姿が印象的な
‘勝利の女神’、‘トンボ’など8点。
ラリックの全体像が頭の中に入ったところで美術館をでると最後に大きな
オマケが待っている。それは美術館の横に展示されている豪華列車、オリ
エント急行‘コートダジュール号’のサロンカー・食堂車。このインテリア
・デザインをラリックが担当した。‘装飾パネル・彫像と葡萄’をみていると
これに乗ってヨーロッパとイスタンブールを旅したくなる。