近代日本絵画のおけるビッグネーム、東山魁夷(1908~1999)と
杉山寧(1909~1993)は洋画界の安井曾太郎と梅原龍三郎のように
いつも一緒にその存在が思い起こされる画家。回顧展を4度も体験した東山
魁夷に較べ、杉山寧のほうはまだ1回しか遭遇してない。漸くそれが実現し
たのは2013年の日本橋高島屋での特別展。このときポーラが所蔵してい
る作品が11点も出品された。これでポーラに杉山寧がたくさんあることが
わかったが、その数が43点にものぼるということを確認したのはそれから
数年経った2度目の箱根訪問のときだった。
これほどの数を所蔵していると美術館単独でも立派な杉山寧展が開催できる。
全部で30点ちかく展示されたような気がするが、そのなかに待望の大作‘水’
や最晩年の傑作‘洸’も並べられておりテンションが上がり放っしだった。
ポーラのコレクションをみればもう完璧!お蔭で杉山寧は一気に済みマーク
がつけられる。
‘水’はエジプト、‘洸’はインドを旅行したときみた光景をもとに描かれたもの。
どちらも日本画というより西洋画の印象が強く‘水’では頭に甕をのせている女
性の衣装の黒と背後を流れるナイル川の深い青のコントラストが目に焼きつく。
インドは2度訪問したので‘洸’に描かれた2頭の水牛に親しみを覚える。その
水牛に少女が乗りこちらをじっとみている。その視線と同じ方向にもう一頭が
正面向きで描かれている。2頭が十字のように交差する構成と青みがかった紫
の水面が柔らかく揺れる描写が心にぐっと響く。
花鳥画はいろいろある。鯉、あひる、孔雀、‘薫’と名づけられた絵は東近美に
ある作品同様、惚れ惚れする孔雀の姿が描かれている。青や緑が鮮やかで広げ
た羽が画面からはみ出すところがいい。まじかにやってくるような感じ。
福田平八郎(1892~1974)の‘鴛鴦’と小林古径(1883~1957)
の‘柿’も目を楽しませてくれる。今はスイカを食べて秋になると歯ごたえのいい
柿を食べるのがわが家の食べ物アラカルト。この柿の絵は本当によく描かれて
いる。