三島にある佐野美術館は日本刀の鑑賞の仕方を指南してもらった美術館。
2007年ここで‘備前一文字展’があり、喜び勇んで新幹線に乗りこんだ。
こじんまりとした美術館のなかにたまたま刀剣愛好家のような小グルー
プがいて渡邉妙子館長の解説を聞きながら名刀の数々をみていた。で、
これ幸いとばかりここにくっついて館長の話に耳をかたむけた。すべて
を理解したわけではないが、‘日本刀は素敵’(2008年 静岡新聞社)
を書かれている有名な館長からじかに刀の見方を教えてもらった
のは大きな収穫だった。
ここにある刀でお宝中のお宝は国宝に指定されている‘薙刀(なぎなた)’。
造ったのは備前長船派の二代目棟梁長光。昔は女性の薙刀の全国大会が
スポーツニュースで流れるとか、時代劇で大奥に忍び込む者がいたりする
と奥女中たちが薙刀であいまみえるシーンをみるようなことがあったから、
薙刀に目が馴染んでいた。でも、今の若い人は薙刀って何?だろうな。
ほかにもいい刀はたくさんある。浅いのたれの刃文の美しい正宗の短刀、
長光の孫で長船四代目を継いだ兼光の大太刀、そして徳川将軍家に伝来
した吉岡一文字派などに思わず足がとまる。日本刀の展覧会は2011年
根津美でもあったが、それから10年近くになる。もし3回目に遭遇した
ら、まわりは刀剣女子に囲まれることになりそう。刀人気が女性にまで浸透
するとは想像だにしなかった。
刀以外で大変魅了される作品がある。熱海生まれの彫刻家、澤田政廣
(1894~1988)の‘白鳳’。高さ2.63mもある木彫の仏像で
両手を鳥の翼のように広げる姿が印象的。