三重県の津市にある県立美へでかけたのは1993年ここで開かれたシャガ
ール展をみるためだった。最近シャガール(1887~1985)の回顧展
に遭遇することはとんとないが、この頃はよく行われていた。シャガールは
ピカソ、ミロ、ダリ同様、大変気になる画家なので作品がたくさん集まって
くることがあれば見逃さないようにしていた。そのため、図録は何冊もある。
この‘枝’は美術館自慢の西洋画で図録の表紙に使われている。
ここにはダリ(1904~1989)のシュール画もある。‘パッラーディオ
のタリア柱廊’はシュルレアリスム展ではよくお声がかかる作品。4年前
国立新美で開催されたダリ展には横浜美や諸橋近代美、福岡市美から出品さ
れた定番の作品と一緒に展示され日本のダリコレクションの質の高さをみせ
つけた。
以前は定期的に通っていた東近美では村山槐多(1896~1919)の
代表作‘バラと少女’とは頻繁に会っていた。自画像は19歳の時の作品。才能
のある画家というのは往々にして短い命でおわる。槐多は22歳で生涯を閉じ
た。1919年に流行したスペイン風邪に命を奪われたのである。関根正二
もこのウイルスにやられ20歳の若さで亡くなった。
大阪出身の佐伯祐三(1898~1928)の‘サン・タンヌ教会’はユトリロ
のパリの絵を連想させる画面構成だが、垂直にのびる建物の輪郭線は微妙に
傾いており、パリの下町特有の匂いともの悲しさが伝わってくる。