メインディッシュの佐竹本歌仙絵をたっぷりみたあとはこの感動をぎゅ
っと体に包み込んでおきたいので、ほかの作品はさらっとみるつもりだった。
でも、スゴイものがところどころに並んでいるのでビッグなオマケも有り難
く拝見した。驚くべき名品は本願寺が所蔵する国宝の‘三十六人家集’、会期中
に躬恒集、素性集、重之集、興風集が分けて飾られる。
金銀切箔などのきらびやかな装飾が施された料紙に能書家による和歌が書か
れたこの私家集は白河上皇の60歳を祝うためにつくられたもの。とびっきり
の名品なのでみる機会が少ない。だから、ええー、これが出ているの!まる
で目の前に宝物が現れたよう。また、躬恒と興風がみれたのは幸運だった。
東博にある‘紫式部日記絵巻断簡’をみるのは久しぶり。昨年白内障の手術を
して視力が1.5に回復したので単眼鏡を使わなくても鮮やかな赤やこげ茶
の輝きが心地よく目の中に入ってくる。これをみてしまうと秋によく展示さ
れる五島美の紫式部日記絵巻(国宝)が俄然みたくなった。
想定外の収穫が‘西行物語絵巻’。出家後の西行(1118~1190)が吉野、紀伊、熊野をめぐる旅の場面を描いたこの絵巻との遭遇を長いこと願っていたがようやく実現した。1993年に東博で行われた‘やまと絵展’にこれが出品されたが、当時しかとみた記憶がない。それは展示替えだったのか見れど見ず状態だったのか。図録をみながらそのうちリカバリーできるだろうと思っていたら、その後まったく縁がなかった。京都で西行に出会うとは。
鈴木其一(1796~1858)の‘三十六歌仙図屏風’はプロ野球のオールス
ターが全部載ったポスターみたいなもの。其一は掛幅でも描いておりいずれ
も尾形光琳の屏風を手本にしている。