‘佐竹本三十六歌仙絵 小野小町’(重文 鎌倉時代 13世紀)
京博ではじまった’佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美’(10/12~11/24)
をみてきた。この秋に開かれる日本美術関連の展覧会ではもっとも関心の高
かったのがこの特別展。もとは絵巻物だったものが36歌仙一人ずつに分割
された歌仙絵を複数以上みる機会がこれまで5回あったが、今回はその数を
大きく上回る究極の佐竹本歌仙絵展。37点のうち31点登場するのだから
これはもうひとつの‘事件’といっていい。
はじめてお目にかかったのは13点。ひとつ々目をこらして座っている歌仙
の姿をみた。どんな歌を詠んだかは後でみることにして、鑑賞エネルギーの
大半を使ったのが個性がそのままでている顔の特徴や衣装の色合い、柄。
表袴のあられ文が印象的なのが‘藤原高光’。6年前サントリー美でみたが、
すっかり忘れ初見のように長くみていた。
諏訪湖のほとりにあるサンリツ服部美が所蔵する‘大中臣能宣’(おおなかとみ
のよしのぶ)と遭遇したのは大きな収穫。この美術館へは2度でかけたが、
縁がなくやっと対面が叶った。薄緑の直衣がとてもソフトな感じで歌仙のイ
メージに相応しい。
ふっくらした顔つきが記憶に残る‘藤原兼輔’は個人コレクターの所蔵。今回
出品された個人蔵は全部で10点。佐竹本は美術愛好家の誰もが手に入れた
かったものだけに今も多くが個人の手元にある。それらがこうして結集した
のだからコレクターでない普通の美術好きにとっては特別な鑑賞機会である。
4点ある女流歌人のうち出品されたのは顔をみせない‘小野小町’(10/12
~11/4)と‘小大君’(11/6~11/24)。もっとも人気の高い‘斎宮女
御’は残念なことにでてこない。これまで2度みたのでまあいいか、となるが
31点も集結して‘斎宮女御’が無いというのは画竜点晴を欠く。どうしてダメ
だったのだろう。
これで佐竹本は31点みたことになる。なんだか大仕事したような気分。
残り6点との出会いはもうないように思うが、これだけみれれば十分。
ミューズに感謝。そして京博に乾杯!