日本画のいい絵を手に入れるには資金力がなくては話にならないが、作品の
情報がタイムリーに入ってこなければそのお金を使いようがない。だから、
いいコレクションをもっている美術好きは複数の目利きの画商と太いパイプ
をつくり作品の幅をひろげる努力を重ねている。そうでなければ緑豊かな
中国山地の山間にある美術館にこれほど質の高い日本画はあつまってこない。
2008年に平塚市美で速水御舟(1894~1935)の回顧展があり、
ここから‘晩秋の桜’と‘荒海’(1915年)が出品された。島根県の安来にあ
る足立美にも御舟があるが、ウッドワンもこういういい御舟をしっかりもっ
ているのだから流石。さらにびっくりするのが安田靫彦(1884~
1978)の‘森蘭丸’。これは東近美が3年前に開催した安田靫彦展に出品さ
れ織田信長を描いた‘出陣の舞’(1970年)の横に展示された。本当にいい
絵をもっている。
安田靫彦があるなら小林古径(1883~1957)や前田青邨(1885
~1977)も期待したくなるが、残念ながら青邨にはお目にかかってない。
古径の‘尾長鳥’は体を寄せ合う番の羽の青が目に焼きついている。こういう
濁りのない色彩をみると日本画の魅力を再認識する。
昨年、ホテルオークラでおこなわれた恒例のチャリテイ展覧会で山口華楊
(1899~1984)の動物画を3,4点みた。黒豹、仔馬、そして晩年
に描かれた駱駝。これまで、狐や馬はみたことがあるが華楊はなんと駱駝に
も愛情を注いでいた。怖い黒豹とは対照的に肩の力にすっとぬけるゆるキャ
ラ風の駱駝には自然と愛着を覚える。