近代日本画の展覧会によく出かけられる方ならウッドワン美はよくご存知か
もしれない。ずいぶん前に訪問したのでクルマをどう走らせて美術館のある
廿日市市の吉和に到着したか記憶が薄れてる。広島市内からだと中国山地の
奥深いところまで行くには1時間半くらいかかったような気がする。総合
建材メーカーを経営する事業家がこの美術館を開館したのは1996年、
広島へ移って1年後のこと。当時は住建美といっていた。
集めた美術品は日本画、陶磁器、ガレなどのガラス工芸。なかでも明治以降
に活躍した日本画家の作品はオールスターが勢揃いするほど充実している。
紅葉の赤と黄色がまるで後光が射したように映るのが橋本雅邦(1835~
1908)の‘紅葉白水図’、中国画の伝統を吸収した日本の水墨画と近代感覚
から生まれた色彩の力が見事に融合した傑作。
横山大観(1868~1958)は数点あるが回顧展には欠かせないピース
のひとつになっているのが‘霊峰不二’、雲海のなかからぐっと頭をだした富士
山は雪の白が目にまばゆいほど輝いている。ドアップの富士なので神々しさ
を一層感じてしまう。
鳥や鹿、魚といった生き物を描くのを得意とした竹内栖鳳(1864~
1942)の‘秋圃’に登場する雀には思わず頬が緩む。雀を描かせたら長澤
芦雪、菱田春草、そして栖鳳の右に出るものはいない。上村松園
(1875~1941)の初期の美人図は雪の降る勢いに押されないように
2人の女性が体を曲げて進む姿が印象深い。