フランスの現代ア―ティスト、クリスチャン・ボルタンスキー
(1944~)の作品はパリのポンピドーでみたというしっかりしたイメ
ージが残っていない。MoMAの展覧会が日本であったとき1点、女の子の
顔写真を前からライトで照らしているインスタレーションンにお目にかか
った。この作品を唯一の手がかりにして今、国立新美で開催中の‘ボルタ
ンスキー展’(6/12~9/2)に侵入した。
全体を見終わったときの印象を先走っていってしまうと、照明を暗くした
部屋でみた白黒の顔写真と豆電球と電気の配線が頭のなかにいっぱいつめ
こまれたという感じ。2番目の画像のように子どものや女性の写真を小さ
な缶のようなもので積み重なったところに置きを電灯で浮かび上がらせる
作品をボルタンスキーは‘モニュメント’と名づけている。この連作が12点
でている。
‘合間に’は縦に細かく切断されたカーテンにボルタンスキーの7歳から65
歳までの顔が映しだされている。みたあとはこのカーテンを開けて次の
部屋に進む。瞬間的にポンピドーの一階ホールの上の部分に飾ってあった
‘ポンピドー大統領の顔’(今もある?)を思い出した。蛇腹の素材が動くと
顔の白黒の濃淡が変わるこのヴァサレリーの作品から刺激を受けたのかも
しれない。
今回収穫だったのが‘アニタス(白)’というタイトルのついた映像の前に
4,5点立たされていた人間のオブジェ。これは‘発言する’という作品。
映像をみているとどこかで誰かがしゃべっている。きょろきょろしたが、
しゃべっているのはこのオブジェだった。3か国語?でしゃべっており、
日本語も流れる。‘びっくりした?’なんて言ってくる。この発想はすごく
おもしろい。参りました!
様々な衣服がどどっと吊り下げられている‘保存室’をみていると同じフラ
ンスの女性ア―ティスト、アネット・メサジュがつくったぬいぐるみの
人形などを数多く集め壁にピンでとめた作品が目の前をよぎった。似た
ようなアイデアが無意識にでてくることはよくある。