エルンストの‘オイディプスⅠ(左)、Ⅱ(右)’(1934年)
ダリ(1904~1989)が大好きな人がこの‘ヴィーナスの夢’をみた
ら仰天すると思う。日本にこんないいダリがあったのかと。サイズは縦
2.44m、横4.88mのサプライズ大画面。描かれているモチーフ
は左半分は1931年に描かれた‘記憶の固執’とほぼ同じでお馴染みのぐ
にゃっと曲がった時計、そして右に目をやると背中が燃えているキリンが
2頭、また手前には目や胸が引き出しに変容した裸婦も登場する。
一体ヴィーナスはどこにいるの。白いドレスを着た腰がきゅっとしまった
2人の女性?その夢がチーズでできた時計と燃えるキリン?
怪しげな裸の女がいるピカビア(1879~1953)の‘アンピトリア’
はみた瞬間ドキッとさせられた。右をよくみると上には大きな男の手がで
ており、その下は口からなにかビニールの線ようなものを吐き出してい
る男の横顔が黒で描かれている。女が誘惑されているのか、暗闇に潜む男
が誘惑されているのか。この絵によってダダとシュルレアリスムをむすぶ
ピカビアという画家の存在を知った。
エルンスト(1891~1976)は1934年から人や生き物の姿をし
た彫刻、‘フィギュア’をつくりはじめる。‘オイディプスⅠ、Ⅱ’ははじめ
石膏で制作され、1992年にブロンズで鋳造された。型として使われて
いるのは植木鉢、右のⅠはオイディㇷ゚ストと殺した父親の関係を表現し下
の父親がオイディプスを頭の上に乗せている。でも、二人の顔は別の方向
を向いている。Ⅱは母親とオイディプスとの安定した結びつきを表し、同
じ向きになっている。
意表を突くシュールさがおもしろいのがマグリット(1898~1967)
の‘人間嫌いたち’。マグリットの作品についているタイトルは描かれた
内容とあまり関係ないのでこれは忘れたほうがいい。ここでの主役はひも
で縛られたカーテン。すぐ連想するのはイギリスの‘ストーンヘンジ’をは
じめとする巨石サークルの遺跡。役者と入れ替わった大きな幕が舞台に立
っているとみることもできる。