大原では民藝派のやきもののほかに柳宗悦や河井寛次郎と交流のあった
棟方志功(1903~1975)の板画が館内にある専用の版画館で楽しめ
る。大原孫三郎とその息子の總一郎は日本民藝運動の支援者だったので、
棟方は大原家のために版画や大原邸を彩った肉筆障屏画を描いている。
‘二菩薩十大弟子板画柵’は1955年のサンパウロ・ビエンナーレで大賞を
受賞し一躍棟方の名を世界に知らしめた。縦長の画面に力強い太線で表現
された弟子たちがそのキャラのままで並んでいる。そして、両端にはふく
よかな顔立ちが印象的な文殊菩薩(右)と普賢菩薩(左)が立つ。
倉敷の大原邸を飾った六曲一双の屏風に描かれた‘御群鯉図’は普段はみれな
いが、2003年に行われた棟方志功展で初公開された。棟方は鯉の絵が
特別上手く、この赤の鯉は絶品の肉筆画。本物の鯉のように元気よく泳ぐ
姿に目が釘づけになった。
1963年に完成した棟方志功版画館の設計・デザインを手がけたのが染色
家の芹沢銈介(1895~1984)。芹沢の作品はやきものなどと一緒の
部屋に展示されている。代表作のひとつ‘沖縄絵図’は柳や河井、濱田たちと
沖縄を訪問したことで生まれた作品。沖縄の島が型染めで力強く表現されて
いる。目に飛び込んでくる海の青と島の赤のコントラストがなんといっても
気を引く。おもしろいのは集落ごとに図柄の模様や色彩が描き分けられてい
ること。
芹沢が65歳にときに制作した‘団扇散らし文二曲屏風’はデザイナーとして
のセンスの良さが発揮されている。こんなモダン感覚な団扇の手にし浴衣姿
で街を歩いたら気分がハイになりそう。芹沢は晩年になるほどデザインの
きれがよくなる。‘風’とか‘寿’といった文字をデザインしたのれんをみると
本当にいいなと思う。