ガラス工芸でフランスのアール・ヌーヴォーをリードしたエミール・ガレ
(1846~1904)のいい作品をもっている日本人コレクターはかな
りいる。これはガレが浮世絵などのジャポニスムに影響を受けわれわれ日本
人の琴線に響く花鳥をモチーフにしたものが多いことも大きく関係している。
ガレにのめりこむきっかけになったのが諏訪湖のほとりにある北澤美の訪問。
傑作‘花器・フランスの薔薇’と出会ったときの感激は今でも忘れられない。
そして、ガレの魅力に深くとりつかれることになった回顧展が2005年
江戸東博で開催された。ここにパリではみてないオルセー蔵の‘彫刻・手’や
‘蓋付壺・たまり水’が登場した。ほかにもエルミタージュやデュッセルドル
フ美、デンマーク王室コレクションの名品がずらっと並びその豪華なライン
ナップにテンションが上がりっぱなしだった。‘フランスの薔薇’とともに最
も魅了された‘手’は夜明りが少ししかともってない部屋でみたら、本物そっ
くりの指に飛び上がるほどドキッとするにちがいない。小さい頃お化け屋敷
で味わった怖さのイメージが重なって感情が乱れた。
ドーム兄弟(兄1853~1909、弟1864~1930)のガラス作品
にも魅了され続けている。北澤美やポーラ美でみた木々などを風景画風にし
た絵柄の細長い花器がとくに気に入っている。‘テーブルランプ・睡蓮’は
運良く世田谷美であったオルセー美展で遭遇した。とても洒落たデザインが
心を和ませる。
ガレ同様好きな人が多いルネ・ラリック(1860~1945)は箱根の
ラリック美とパリの装飾美でジュエリーなどを楽しんだ。いつかポルトガル
の首都リスボンを再訪問しグルベンキアン美にある傑作宝飾品の数々と対面
することを夢見ている。‘飾りピン・芥子’は日本に2度やって来たが、
1897年のサロンで国家買い上げとなった出世作。繊細でかつ華やかな
デザインが胸を打つ。