マティス(1869~1954)はMoMAではミロとともに追っかけ画の多い画家。予定では4点と出会うことになっていたが、実際にみれたのは‘赤いアトリエ’だけ。でも、これまで画集でみたことのない作品が3点あった上、お気に入りの‘モロッコ人たち’や大作‘ピアノのレッスン’と再会したのでとても充実したマティスになった。
室内の床も壁も赤一色に描かれた‘赤いアトリエ’はぱっとみると平板な絵という印象、ところが不思議なことに画面をじっとみていると床は横にのび、壁はそこから垂直の面になっているようにみえてくる。どうやら後ろに置かれた完成作品の配置に仕掛けがありそう。そして、赤の色がところどころで濃淡がつけられている。
これに対して‘モロッコ人たち’では人物や建物はトランプの絵柄みたいに整然と割り付けられている感じ。だから、描かれた対象に動きはない。強く印象に残るのは左下の円いメロンの緑と黄色を鮮やかに引き立てている背景の黒。この絵をはじめてみたのは1990年、ワシントンのナショナルギャラリーを訪問した際、運よく‘モロッコのマティス展’が開催されていた。以来、画面をひきしめる濃密度200%の黒とメロンの緑に魅了されている。
Myカラーは緑&黄色だから、隣に飾ってある‘ピアノのレッスン’にも敏感に反応する。この絵は縦2.45m、横2.12mもある大きな絵。ピカソの‘アヴィニョンの娘たち’やルソーの‘夢’同様、絵の大きさをすっかり忘れているから、新鮮なサプライズ3連発だった。
レジェ(1881~1955)はリカバリーを願った‘大きなジュリー’は姿をみせてくれず初見の2点が目を楽しませてくれた。画像は音楽家3人の絵。明快な色彩と黒の輪郭線で形どられた彫刻的な人物をみているとたちまち心が軽くなる。
ドイツ表現主義のベックマン(1884~1950)が三幅対の作品を手がけたのはちょうどナチスから退廃芸術家と烙印を押されたころ。その第一作が‘船出’、左右のパネルは拷問の場面で、中央はその拷問から解放され自由を手に入れたところ。時間があればじっくりみたいところだが、追っかけ画がいっぱいあるのでそういうわけにもいかない。