世界中の大きな美術館にはラファエロ(1483~1520)の心を打つ
聖母子像があるが、ルーヴルでみられる‘美しき女庭師’は‘これぞラファエロ
の聖母子!’と思わせるとびっきりの傑作。美術の教科書でラファエロのイ
メージができたのは美術の教科書に載ったこの絵とフィレンツェのピティ宮
にある‘小椅子の聖母’。はじめてルーヴルに行ったときは‘モナリザ’と‘美しき
女庭師’と対面できたことが嬉しくてたまらなかった。
ルーヴルのような大美術館では名画が切れ目なく現れるので、まずは知って
いる絵に鑑賞のエネルギーを多く使う。そのため、ラファエロが数点描いた
龍退治の小品などはみたという実感がまったくない。大天使ミカエルに踏ん
づけられた漫画チックなドラゴンに気づいたのは2回目以降の訪問でのこと。
対になる絵として描かれた‘聖ゲオルギウスとドラゴン’も同じ。
ミケランジェロ(1475~1564)の大理石彫刻がイタリアの都市以外
でみれるのはパリ、ロンドン、サンクトペテルブルク、ブリュージュ。ルー
ヴルには2点の奴隷像がある。みもだえるようなポーズが印象深い‘瀕死の
奴隷’と激しい内面性を感じさせる‘反抗する奴隷’。こんないい彫刻がフィレ
ンツェやローマと同じくパリでお目にかかれるのだから、流石ルーヴルで
ある。
フィレンツェでとてもカッコいいペルセウスの彫像をみて以来これをつくっ
たマニエリスムの彫刻家チェッリーニ(1500~1571)にのめりこん
でいる。ルーヴルでは‘フォンテーヌブローのニンフ’が楽しめる。ニンフの
まわりを囲む鹿、犬、猪も興味深い。