ルネサンス美術に興味がむかったころはテレビの美術番組をビデオに収録し
ひたすら情報を集めた。そのなかに特別興味をそそるイベントがあった。
シエナで毎年7月と8月にカンポ広場で開催される裸馬競馬‘パリオ’、これは
13世紀から続いているそうだ。2006年、その勇壮な競馬が行われる
カンポ広場に足を踏み入れた。
この広場は102mの高さをもつマンジャの塔を中心に扇型に広がっており、
塔に向かって傾斜がついている。あの激しい伝統競馬の場面をイメージしな
がらぐるっとまわってみた。中世の時代、隣町のフィレンツェのライバルと
して覇権を争ったシエナにはもう一つすばらしい建物がある。1229年に
建築がはじまり14世紀の末に完成したドゥオーモ。黒大理石のラインのアク
セントが印象深く壮麗なファサードは言葉を失うほど美しい。
なかに入りびっくりさせられるのは床に施された見事な象嵌装飾。そして、
法王アレッサンドロ7世の命により1661年につくられたキージ礼拝堂に
はベルニーニ(1598~1669)の彫刻‘聖ヒエロニムス’と‘マグダラの
マリア’がある。ほかにも天使像やニッチの中の像を手掛けている。
また、ドゥオーモのアプシスの延長である洗礼堂でも15世紀の彫刻の傑作
にお目にかかれる。1417年につくられた洗礼盤の下部は六角形の水槽に
なっておりその外面を金張りブロンズのパネルで装飾している。ここにギベ
ルティ(1378~1455)の‘イエスの洗礼’、‘洗礼者ヨハネの逮捕’、
ドナテッロ(1386~1466)の‘ヘロデ王の宴会’がある。なんとも見
ごたえのあるパネル。